大森靖子『絶対少女』の感想を一曲ずつ書いて行っています。 → 絶対少女 - ニワノトリ
今回は大森靖子『絶対少女』の10曲目「W」の感想を書きたいと思います。
※歌詞および解説はこちら
すみません。すみません。
このタイトルを聞いて最初に浮かんできたのも、この歌詞を聞いて最初に思い描いたのも、「W」でした。
「リーダーの辻希美です」「サブリーダーの加護亜依です」「二人合わせてWです」でおなじみの、あのWです。
あたしはあなたの うらみち
あたしはあなたを うらみちゅう
二人はそんな関係だったのかなあ、などと考えながらぼんやりと聞いています。
実際の二人の関係は私には知りようがないですが、仲の良い女の子二人組って、割とこういうところがあるんじゃないかなあというような気がします。
あなたはわたしで、わたしはあなた、というくらいにずっと一緒にいて、お揃いのストラップをつけたり、色違いの服を買ったり、同じものを好きになったり……色んなことを共有していても、その実、どこかで互いの存在が互いを傷つけあっている、みたいな。
仲がいいのは本当だけど、相手を見ていると、自分にないものを見せつけられているような気分になって、いっそ隣にいない方が楽なのに、という気持ちになってしまうような。
そんな関係ってあるよね。
……という話を友人に聞いたことがある。
私の実体験ではない。
本当にそんな関係あるんだろうか、あるんだろうな、たぶん。
大森さんの解説によれば、この曲は「お気に入りのぬいぐるみのテーマソング」だということ。
ぬいぐるみに語り掛けるような曲なのだろうか。
確かに、なんか、ぬいぐるみを見ていると、無性に泣きたくなる時ってあるよね。
しかし、この曲を聞いて、ぬいぐるみに語り掛ける女の子ってかわいいけど、かわいいばかりでもないんだろうなと思った。
うわきをゆるしてころしてみたり
復活のじゅもんまちがえちゃったり
いつのまにかかなしくて やりなおし
ゆるしてころしたり、復活できるはずなのに呪文をとなえられなかったり。
この曲は曲調も声も歌詞もかわいいけれど、悲しさややるせなさに溢れている。
かわいい口調でぬいぐるみに語り掛けても、その言葉の中に、その口調とは裏腹の、悲しさとか、憎しみとか、恨みとか、苦しさとか、虚しさとか、そういうものが滲み出てしまうこともあるんだろう。
もしかしたら、世の中の女の子は、家に帰って、メイク落として、ぬいぐるみに話しかけることで諸々の感情を「かわいく」して乗り越えて、明日のかわいい私を保っているのかもしれない。
うまくいってたはずなのに、うまくいくはずだったのに、いつの間にか、なんかうまくいかなくなってて、また振り出しに戻るしかないことって、確かにある。
この曲の場合、そんな「やりなおし」を可能にするのが、「かわいさ」なのかもしれない。
もしくは、「かわいさ」が「やりなおし」を可能にしてしまうのかもしれない。
この曲は「かわいさ」の中に、「うまくいかなかった」ことへの悲しみや恨みをしたためている、そんな感じがする。
だから、この曲は物悲しいし、やるせない。
などと考えつつ、私はこの曲を聞きながら、私ももっとかわいさに素直になりたいものだと思った。
私には、大森靖子のようなセンスと本気度をもって言葉を並べるのはもちろん無理だが、この曲くらい、かわいさに忠実に言葉を紡ぐことができたら、もっと違う世界が見えてくる気がする。
この曲を聞いていると、頭でっかちな文章しか書けない自分が虚しくなってくる。
だから、今回の感想文はきっと、今までのレビューよりは頭がでっかくないものを心掛けた。
この記事は、http://n1watooor1.exblog.jp/ にて、2014/6/11に公開したものです。