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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

「今の」モーニング娘。にしか歌えない曲/「愛の軍団」の感想

少し前の話ですが、 「ハロプロ楽曲大賞2013」 さんで投票をしてきました。
せっかくなので、ここでの投票を期に、今年のハロプロを振り返りつつ、好きな曲の感想?レビュー?を書いてみました。


というわけで、以下、私が一位に投票した『愛の軍団』の感想です。

 



0.


しばらくはこの体制で行くであろう(行ってほしい!)現、10人体制初のシングル曲。
「わがまま 気のまま 愛のジョーク」も今の娘。の良さが出ていて好きなのですが、「愛の軍団」は何回聞いても、そのたびに「今のモーニング娘。」が歌う良さが出ている曲だなあと感心してしまうので、こちらを一位にしました。

「愛の軍団」は、自分たちのパフォーマンスに少しずつ自信がついてきてはいるけどまだまだ上を目指して日々上昇中、みたいな今の娘。の状態が、「自分を信じて行くしかない」というこの曲の世界観にはまっていて、とても好きです。
「わ気愛J」はこれから先、パフォーマンスを重ねるごとに完成度が上がって、どんどんカッコよくなって行くと思うのですが、「愛の軍団」という曲では、2013年の夏の娘。が、今、この瞬間にしか出せない魅力が表現されているような気がします。


あと、「愛の軍団」を聞いていると、つんくさんも親になったんだなあ、と思う(笑)。「君居れ」もそうなんですが、これまでのハロ曲にはない類の優しさが滲み出している気がします。
そういう意味でも、これからの娘。の変化を予感させてくれる素晴らしい一曲ではないでしょうか! 

1 

「愛の軍団」を聞いていると、私がまだ9-10期メンバーくらいの年ごろで、毎日学校に通っていた頃のことを思い出します。「まあ、いろいろ悩みはあるだろうけどがんばれよ」と、当時の自分を励ましてやりたくなります。
思い出すというよりは、思い返すという感じでしょうか。

なぜ、そんなセンチメンタルな気分になってしまうのかって、「愛の軍団」がすごく学校っぽい曲だからだと思うんですよね。
制服っぽい衣装とか。
行進っぽい振付とか。
「愛あるムチなら仕方ないってほんと?」という素朴な疑問とか。
衣装や振り付けは、学校っぽいっていうか軍隊っぽいんですが、そもそも軍隊と学校ってちょっと似ているので、そういう軍隊っぽさも含めて学校っぽい。

学校というのは、勉強をする場所なんですが、知識を覚えると同時に、社会に出るために「規律を守ること、身に着けること」を覚えるための場所でもあります。
そして、そういう、決められた規律をきちんと守り、身体にしみ込ませなくてはならないという点で、学校と軍隊は似ている。
毎日、決められた時間に起きて、決められた時間に授業を受けないといけない、校則は守らなければならない、先生の言うことは聞かなければならない、集団行動を乱してはならない……。
学校にはいろんな決まりがあって、それを守らなければなりません。
「愛の軍団」の最初で模されている「行進」というのは、そういう「規律を守ること」の象徴みたいなものです。みな、決められたリズムで、決められた歩幅で、決められた角度で足を上げなければ、きれいな行進にはなりません。

ただ、学校が軍隊と違うのは、学生というのは、決められたルールや目上の人に反発したり、文句を言ったりすることが、日常的に、普通にあり得るという点でしょうか。
「叱られるうちが花」「苦労は買ってでもしろ」、そうしたAメロの歌詞をつんくさんはライナーノーツで「色々よく聞くありがたい説教」と呼んでいますが、
学生というものは、時に先生に怒られ、反発し、「君のためを思って言ってるんだ」と叱られ、「叱られるうちが花なのよ」と励まされ、そんな大人たちの「ありがたい説教」に、時には「本当かよ」と毒づいたりしながら、日々を過ごしているものです(たぶん)。

み んな同じリズムを刻みながら、そんなありがたいお説教に「ほんと?ほんと?」と疑問を投げかけるこの曲の歌い出しと振り付けは、毎日同じ時間に起きて、同じ時間に授業を 受けて、一応は決められたルールにのっとった毎日を過ごしながらも、何か、決められたものに対する違和感を抱えている。そんな、若者の姿のようにも見えま す。


2. 


しかし、10代も半ばになってくれば、苦労は買ってでもした方がいいことも、叱られるうちが花だということも、理屈としては、分かると思うんです。
けれど、「苦労は買ってでもした方がいい」とか「叱られるうちが花だ」というのは、ある程度、長い人生を生きて、後を振り返ったときに、しみじみと「ああ、あの時、苦労しといてよかったな」と実感する理屈ではないでしょうか。
なので、それをまだ十年とちょっとしか生きていないような人間に納得しろというのは、少々理不尽な要求でもある気がします。
ティー ンネイジャーの頃の私も、「成功したら幸せだとは限らないじゃん!」などと親に反抗したりしておりましたが……まあ、今、振り返れば、あの頃自分がこねく りまわしていた理屈は単なる屁理屈に過ぎないものではあったのですが、よくよく考えてみると、それは決して、ただ、脊髄反射的に大人に反発だけをしていた わけでもなかったような気がします。
お決まりの説教への反発というのは、10年と少ししか生きていない「私」の人生を先回りして、そこから得た教訓のみを話す、大人の「ずるさ」への反発だったようにも思うのです。

れいなが娘。を卒業した時、うさちゃんピースでさゆとれいなが言ってました。
「努力は報われることもある(けど、報われるとは限らない!)」
どんなに叱られたって、苦労をしたって、報われないことっていっぱいあって、人生ってそんなことの繰り返しです。
それでもやっぱり、大人は「苦労は買ってでもしろ」「叱られるうちは花だ」っていう。きっと、彼らはいろんな苦い経験を積んだからこそ、「確かに、報われるとは限らへんけど、苦労は買ってでもした方がいいんやで」って、心から言えるんです。
た だ、それは、あくまでも大人になってから……最強6期ほどのキャリアを重ねたからこそ言える言葉なのであって、反抗期とか思春期の段階では、やっぱり、私 はこんなに頑張ってるのに、こんなに報われないのに、こんなにしんどいのに、なんで「苦労は買ってでもした方がいい」とか言うの? 本当にそうなの? っ ていう葛藤とかがすごくあると思います。

今回の曲で、身をかがめた姿勢から一人だけ上に跳びだしたり、手を上げたりする振り付けが多いのは、そういう、若者の反抗心や葛藤があふれ出す瞬間を表現しているのかなーとか思っています。

3.

この曲はAメロで、「ほんと?ほんと?」と「世間でよく聞くありがたい説教」(byつんく氏)に疑問を投げた後、Bメロで以下のように展開します。

世間を知らず 街を飛び出し ここで暮らす今 
いつの間にやら ふるさとのような 温もり感じてる


目的知らず この世に生まれ 年重ねた今
使命感的な何かが 生まれてきたのは 事実

 



Aメロでは、「世間」や「この世」なる大人の理屈に対する嘆きが歌われていたのですが、Bメロでは、そうした「世間」との間にあった距離感が、「温もり」や「使命感的な何か」によって埋められようとしています。

ふるさとのようなぬくもりも、使命感的な何かも、自分の内側から生まれてくるもので、「苦労買ってでもしろ」のように、「説教」として外側から与えられる理屈ではありません。

 しかし、かと言って、完全に自分の中からだけ生まれてくるものでもない。「温もり」は、自分の世界に籠るのではなく、今暮らしている場所に愛着を感じることから生まれ、この世に何を為すべきかという「使命感」は、自分がそこにある「社会」と関わっている事実、そして、「社会」に関わって行こうという意志か ら生まれます。

ここで歌われている「使命感」や「温もり」は、「ここで暮らす」ことや「この世で年を重ねる」こと、そして、自分の生まれた世の中や自分の生活する場所と関わることを通して、生まれてくるものなのです。

二番のサビには

 

近くあるときゃ分からなくて 遠く離れたら気がつく
無いものねだり人間でも ありがたさ知れ

 

とあります。
 
そ れこそ説教臭く、ありきたりな理屈なのかもしれませんが、結局、自分と社会の間にある葛藤を抜け出すためには、「身近にある人との関わり」を大切にし、そうした人々との関わりを通して、自分の内側に生まれる「温もり」や「使命感」を手掛かりにしていくしかない……ということを、Bメロ、そして、サビで 歌っているように聞こえます。

世間のいうことに納得いかなくても、どう頑張ったって、あがいたって、人間は世間、あるいは社会の中で生きていくしかない。
そして、その世間の中には、どうしたって、理不尽な現実があります。そうした社会の現実の中で、「私」が何を信じ、誰を信じて生きて行くのか。
大人になるというのは、そうした「主観」を打ち立てて行くことなのだと思います。
そうした「主観」は、他者との関わりの中で生まれてくるものでありながらも、「ぬくもり」や「使命感」を手掛かりに自分で自分の葛藤に打ち勝ち、獲得して行かなければなりません。
結局は、「自分を信じて行くしかない」のです。
「軍団」というのは、そうした「自分を信じて行く」勇ましさを表現するものであるのだと思います。
それは、ただ自分だけを信じているのではなく、自分を取り囲む街や世の中とともに生きる中で、生まれてきた態度です。

ただ、ルールを押し付けるのでも、ルールを教える社会に反発するのでもない、周りを受け入れ、ともに生きて行く。それが「愛」にあふれた「軍団」なのであると思います。

この曲があえて、「 “GUNDAN” of the love」と訳されているのにも、ただ世間に迎合するのでもなく、ただ、厭世的に生きるのでもない、そういう生き方のイメージを、規律的なニュアンスのあ る「Army」ではなく「GUNDAN」という単語に込めたかった……のかも、しれません。

 

というわけで、長くなりましたが、この曲は、つんく氏の娘。メンへの愛にあふれた曲だなーと思うわけです。
これは、反抗期、思春期のただなかにたって、自分の殻を破れずにもがく、思春期、反抗期がんばれよ! という曲であり、「使命感的な何か」を感じてきたであろう、さゆの今の心情、さゆがリーダーになるまでの道のりを歌う曲でもあると思うんです。
だから、あー、まさしく、「今のモーニング娘。」の曲だなあって思います。

特にこの曲で好きなのが鞘師で、ストイックな優等生である鞘師が、自分の殻を破ろうとするかのように「煩悩 本能」と歌うところなんかはかなりぐっとくる。つんく氏のいう「あの子の表情の中にある苦しみや叫び」(ライナーノーツより)って、こういうことなのかなあ、と。

というわけで。
要は、聞きながらいろいろ解釈できるので好きってことですかね。
ほかにも、軍団というタイトルとイメージでありながら、決められた規範を破る歌詞を歌っているところなんて素晴らしいと思います。

というわけで、この曲を1位にして、2ptを入れました。

 

※この記事は、http://n1watooor1.exblog.jp/ にて、2013/12/17に公開した文章を修正したものです。

 

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