ニワノトリ

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あなた=つんくさんの音楽説/『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』@『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』の感想

 

2015年の3月3日に無期限活動停止することが発表されているBerryz工房
1月21日に、そんな彼女たちのシングル曲をすべて収録した『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』が発売されました。

デビュー曲の『あなたなしでは生きてゆけない』に始まり、2015年バージョンの『あなたなしでは生きてゆけない』に終わるこのアルバム。
『あななし』というBerryz工房のデビュー曲にして代表曲の間に、Berryz工房の10年間が詰め込まれたこのアルバムは、合計3時間を越えます。

 

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物理的にもとても分厚い。

 

このアルバムの最後を飾る『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』は、10年間の厚みを凝縮したようなアレンジが素晴らしい一曲です。
私はこの一曲を聞いてすごく感動してしまったので、感想を書きたいと思います。

 

□『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』の構成はこんな感じ

 

あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』はタイトル通り、2004年のBerryz工房と2013年のBerryz工房が、2015年という場所で出会うような、そんな編曲になっている曲です。

この曲の一番を歌うのは、2004年(デビュー時)のBerryz工房

二番を歌うのは2013年にこの曲を録音し直したBerryz工房(録音し直したバージョンはアルバム『Berryzマンション9階』に収録されてます)。更に、二番から大サビに向かう間奏部分と大サビ部分には、2013年のBerryz工房の初めての武道館公演の時に使われていたアレンジが用いられています。

そして、その後、最後のオチサビでは、右耳から2004年のBerryz工房の歌声が、左耳からは2013年のBerryz工房の歌声が聞こえてくる。

このように、『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』は、2004年のBerryz工房と2013年のBerryz工房を同時に楽しめるようなアレンジになっています。

特に、一番の、切ないストリングスとともにBerryz工房の声が反響するようなアレンジから、原曲に近いアレンジになっている二番に移り変わるところは、Berryz工房が10年の時を飛び越えて、現在にやってきたような感覚があって、ゾクッとさせられてしまいます。

(※新参の素人耳なので、色々と勘違いがあるかもしれません……)

 

□歌声の変化

 

メンバーからのコメントにも書いてありますが(このアルバム。一曲一曲にメンバーからのコメントが書いてあるんです!)、まず、一聴して驚くのはメンバーの歌声の変化です。

2004年のベリメンの声はやっぱり幼い。小さい子特有のかん高さがあって、声の幼さと、曲・歌詞の大人っぽさのギャップがすごいです。「この子達、意味わかってて歌ってるのか?」と思ってしまうようなアンバランスさが妙な艶っぽさを醸し出しています。

対して、2013年のベリメンの声は太くて力強く、発声方法からして違うんだろうなと思わされます。「一生あなたのこと愛したい」と歌い上げる声には、『あななし』を歌い込んで、モノにしてしまったBerryz工房の貫禄を感じずにはいられません。

声を聞いているだけで、10年という時の長さが伝わってくる……これは、小学生時代からずっと歌を歌い続けてきたBerryz工房ならではの業だと思います。


2004年、Berryz工房がデビューした時、この曲を作ったつんくさんは、

 

「あなた=音楽」と解釈して聴いて見てください。
現代を生きる女の子の「私が一番!」という強い精神が浮かび上がってくるはずです」

 

と言っていました。

 


Produce Work│つんく♂オフィシャルウェブサイト

 

2013年のベリメンの歌声の力強さは、Berryz工房が10年間で成長したのは技術だけでなく、「あなた」という「音楽」に込める思いや姿勢でもあるのだということを、教えてくれます。

 

□「半信半疑」から「信念」へ 〜1番を04年のBerryz工房が、2番を13年のBerryz工房が歌うというのが素晴らしいという話

 

私が『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』で何よりも感動してしまったのは、一番を2004年のBerryz工房が、二番を2013年のBerryz工房が歌うという構成です。

一番で、2004年のBerryz工房

 

半信半疑なくらい
うまくいくのって慣れない
どういうのがデートなの?
絶対とは言いがたい
恋の終幕って見えない
ハッピーエンドになりたいの

 

と、目の前の恋への不安を歌っています。
一番の「私」は、恋の「終わり」を想像しては「今」の恋に怯えています。
"「あなた」との恋がうまくいっている「今」だけど、「私」はその「今」に安心できない。これがいつまで続くんだろう、ハッピーエンドになりたい、けど、そうならなかった時に傷つくのが怖い。"というように。

 

しかし、『あななし』の二番。2013年のBerryz工房はこのように歌います。

 

周りに流されない
信念を持っちゃ いけない?
こうなったら突き通すわ

 

2004年のBerryz工房の声でこの歌詞を聞くと、小さな女の子の強がり、もしくは、幼さ故のかわいらしい決意にも聞こえます。けれど、2013年の厚みと深みを増したBerryz工房がこの歌詞を歌うと明らかにイメージが違う(と思う)。

アイドル十年やっちまったBerryz工房の長い道のりを考えれば、「信念を持っちゃいけない?」という言葉は強がりなんかではない。それは彼女たちの本気の決意であって、Berryz工房Berryz工房を続けてきたことこそが「信念」なのである……

『あななし』の二番は、このような説得力を持ってファンの耳に突き刺さるのではないでしょうか。

 

□「あなた」=「(つんくさんの)音楽」説

 

上に引用した歌詞は、更にこう続きます。

 

青春には絶え間ない
疲れ癒すほどのララバイ
ずっと本音で愛したい


メンバーはたびたび、「Berryz工房が青春の全てだった」という主旨の発言をしています(このアルバムに収録されているDVDでも聞けますよ!)。
色んな意味で体力もいるアイドルを続けてきたベリメンたちは、10年の間、ずっと歌を歌い続けてきたわけで。
まさしく、彼女たちの青春には絶え間なく音楽が流れていたはずです。

 

例えば、『普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?』という曲には、

 

辞めたくなって真夜中ずっと
涙したこともあるんだけど
アイドル10年やっちまったんだよ
簡単そうに見えちゃう職業
それでもやっぱ歌えば官軍
これでよかったと感極まって涙しちゃう

 

という歌詞があります。
もしかしたら、時には辞めたくなって真夜中に涙してしまうようなアイドル生活の中で、Berryz工房にとっての「疲れ癒すほどのララバイ」とは、彼女たち自身の歌や、自ら「歌を歌うこと」「歌を届けること」であったのかもしれません。

だから、今、改めて、「青春には絶え間ない 疲れ癒すほどのララバイ ずっと本音で愛したい」という歌詞を聞くと、10年前のつんくさんが10年前に今のBerryz工房を予言していたのか!? とすら思ってしまいます。

 

 

しかし、これは、裏返せば、Berryz工房が、『あななし』というデビュー曲が歌う「音楽への想い」を全うし、そのまま体現してしまったということなのかもしれません。

すなわち、『あななし』の二番には「運命はここにあったわ」という歌詞がありますが、「(音楽を愛するという)運命」を手繰りよせたのは、ほかならぬBerryz工房自身なんじゃないか。Berryz工房が、アイドルという一つのことを続けてきたからこそ、「音楽」を自分のモノにできたのではないか。

 

なので、唐突ですが、私は、『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』の「あなた」は「(つんくさんの)音楽」と解釈することもできるんじゃないかな、と思っています。

 

『あななし』は、そもそも、「つんくさんがほぼ全編歌ってるw」と有名(?)な曲です。

 


Berryz工房「あなたなしでは生きてゆけない」 (MV) - YouTube

 

よく聞くと……いや、よく聞かなくても、Berryz工房の後ろでつんくさんが歌い続けているのが分かります。
『あななし』という大人っぽく、楽曲としての完成度も高い課題を与えられた幼いBerryz工房たちを、つんくさんのコーラスが支えていると言っていいのかもしれません。

 

しかし、『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』では、それとはちょっと様子が違うように聞こえます。
上記の通り、『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』の最後のサビでは、04年のBerryz工房の声と2013年のBerryz工房の声が重なります。
Berryz工房Berryz工房が出会うこのアレンジはとても感動的なものなのですが、この部分、聞きようによっては、04年のBerryz工房の声を13年のBerryz工房が導いているようにも聞こえるんです。
「この曲はこう歌うんだよ」「あなたは、この曲をこうやって歌えるんだよ」というように。

なので、10年前の『あななし』で、つんくさんのコーラスが担っていた、ベリメンの声を支えるという役割を、13年のBerryz工房が引き継いでいると見ることも可能なのではないでしょうか。

 

そんなことを考えながらこのアルバムを聞いていると、

 

思い出を 更新したい EVERY DAY
一生あなたの事
愛したい

 

この歌詞を歌うBerryz工房の歌声に、「ほら、私、ちゃんと音楽愛したでしょ?」というBerryz工房の自負を感じ取ってしまいます。

 

私は、このアルバムが『あななし』に始まり『あななし』で終わるのはとても素晴らしいことだと思います。
2004年の『あななし』が、つんくさんからBerryz工房への「こんな風に音楽を愛せるか?」という課題、もしくは挑戦状(?)だとしたら、2015年のアルバムに収録された『あななし』は、そんなつんくさんに対する「私達は音楽を愛しきった」というアンサーソングとして聞くことができる。
そんな風に感じるからです。

あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』には、つんくさんの音楽をずっと歌い続けたBerryz工房から、つんくさんの音楽への感謝であるとか、愛であるとか……10年の間に培われた、つんくさんとBerryz工房との関係性が詰め込まれていると解釈することができるのではないでしょうか。

 

 


Berryz工房 『永久の歌』 ([Berryz Kobo(Song of Eternity])(Promotion Ver.) - YouTube

 

 

Berryz工房のラストシングルのうち一曲は『永久の歌』。
一ファンとしては、2015/3/3を境に新しい一歩を踏み出すBerryz工房たちですが、きっと、彼女たちの人生の中に、ずっと、つんくさんの音楽が生き続けるんじゃないかな、とか、そんなことを夢想してしまいます。
3月3日に、Berryz工房がハッピー「エンド」を越えた永久の/無期限の伝説を手に入れるまで、つんくさんの曲を歌い続けたBerryz工房を応援して行きたいです。

 

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