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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

アイドルという今、私達の未来/Berryz工房 〈永久の歌〉と〈ロマンスを語って〉の感想

 

 

 二〇一四年八月、Berryz工房が二〇一五年春をもって無期限活動停止となることが発表された。三十六枚目のシングルとなる同年十一月に発売された《ロマンスを語って/永久の歌》は、活動停止前ラストシングルだ。そのリリースイベントにおいて、Berryz工房は、二〇一五年三月三日、彼女たちのデビュー記念日であるこの日に、十一年の活動に区切りをつけることが明らかになった。

 

Berryz工房の名曲(だと思う)《愛はいつも君の中に/普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?》は、《ロマンスを語って/永久の歌》の一つ前のシングルである。

 


このシングルが発売された頃にはまだ、Berryz工房の活動停止について、ファンには何も知らされていなかった。しかし、振り返ってみれば、《愛はいつも君の中に/普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?》は活動停止へ向けた布石、Berryz工房の十年をファンに、そして世間の記憶に刻み付けるためのシングルであったのかもしれないとも思う。

 

 


Berryz工房 『愛はいつも君の中に』(Berryz Kobo[Love is Always inside ...

 


Berryz工房 『普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?』 (Promotion edit ...

 


愛はいつも君の中に/普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?》は、それぞれ、Berryz工房がアイドルを十年貫いて来たからこそ説得力を持つ曲であり、その歌声には、Berryz工房の十年の歴史の厚みが滲み出していた。

 

仮に、《愛はいつも君の中に/普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?》がBerryz工房のアイドルとしての十年の歴史を感じさせるものだったとすれば、活動停止前ラストシングルとなる《ロマンスを語って/永久の歌》が感じさせるのは、Berryz工房の「何」なのだろうか。

この記事では、そんなことをつらつらと考えてみたいと思う。

 

■幕が上がった、そのステージで

 

まず、最初に、〈普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?〉(〈アイ10〉)と〈永久の歌〉(〈永久〉)を聞き比べてみよう。

 

ママのダメだしはキツいけど
言ってる意味は確かにわかるよ
それでもほら もうすぐ幕が開く〈アイ10〉

 

一緒に居た素敵な空間
最高に幸せな時間 〈永久〉

 

〈アイ10〉は、Berryz工房が、アイドルとして生きてきた十年間を語りなおして行く曲である。
歌われているのは、「アイドルとしての私」がその裏に抱えてきた葛藤や歴史だ。つまり、〈アイ10〉が焦点を当てているのは、ステージの裏側でBerryz工房が抱えてきた物語なのであり、描かれているのは「幕が開く」前のBerryz工房の姿である。(というようなことをこの記事で考察しました→ http://niwanotori.hatenablog.com/entry/2014/10/01/231711

 一方で、〈永久の歌〉は、MVがステージを模し、一番のサビで彼女たちのデビュー当時のライブ映像が流れることもあり、ステージの上で歌うBerryz工房の姿が歌われているように聞こえる。「一緒に居た素敵な空間 最高に幸せな時間」……そこに描かれているのは、ステージ上で歌うBerryz工房、その上から見える景色だ。

 

 


Berryz工房 『永久の歌』 ([Berryz Kobo(Song of Eternity ...

 

 

〈アイ10〉では、次のようなことも歌われていた。

 

チヤホヤされてた若い頃
あの頃が少し懐かしいけど
今日も歌う 大好きな歌 〈アイ10〉

 

 一方、〈永久〉には、次のような歌詞がある。

 

 忘れないあの日の歌と
キラキラと輝いた夢 〈永久〉

 


両曲に共通しているのは、Berryz工房がずっと歌い続けてきた、ということだ。
そして、両者の差異をあげるとすれば、〈アイ10〉が、デビュー当時「チヤホヤされた若い頃」から今に至るまでの苦い歴史を歌っているとすれば、〈永久〉が歌っているのは、昔からずっと輝き続けていた「夢」である。

 

 次の歌詞も聞き比べてみよう。

 

アイドル10年やってらんないでしょ!?
石の上さえ3年だよ
青春全部ささげたことは
誇りに思って生きて行くわ 〈アイ10〉

 

一緒に居た素敵な空間
最高に幸せな時間
積み上げた小さなプライド
歌おう 永久の歌 高らかに 〈永久〉

 

 こうしてみると、〈アイ10〉がアイドルとして青春の日々をささげてきたことを誇りに結び付けているのに対し、〈永久〉は、キラキラとしたステージを、空間を、時間を作り上げ、たくさんの人と共有してきたことを「プライド」に結び付けているように見える。
 言い換えれば、〈アイ10〉が、アイドルとして生きてきた「過程」に重きを置いているとすれば、〈永久〉は、「過程」というよりは、成し遂げてきたものや描いてきたもの(結果と夢)に焦点を当てているといえるのではないだろうか。

 

成長の裏側って
失敗がちり積もっていること
今ごろになって実感してる 〈永久〉

 

 
〈アイ10〉が、アイドルとして生きる「今」の内側から、アイドルとして生きる覚悟について歌っていたとすれば、〈永久〉は、アイドルとしての「今」を積み上げた上に立っている。
「成長」を自覚した彼女たちは、今までの自分を振り返り、自分たちの失敗も成功も、全て含めて成し遂げてきたことに誇りを持ち、自分たちが積み上げてきた「アイドルとしての今」を認めるのである。


Berryz工房の決意

 

それでは、〈愛はいつも君の中に〉(〈愛いつ〉)や〈ロマンスを語って〉(〈ロマンス〉)を、上記の二曲と聞き比べてみると、何が見えてくるだろうか。

 

まっすぐに生きるのってとても難しい
誘惑や臆病が君にささやく
好きなのってなんだろう
したいのってなんだろう
大切にすべき事さえ見失うのかい〈愛いつ〉

 

持つべきは友達って
するべきは今すぐって
分かってる でも難しい 〈永久〉

 

上記の歌詞を比較すると、〈愛いつ〉が「君」より一歩先に進んだ視点から、「君」を叱咤し、諭し、励ますように歌われているのに対し、〈永久〉にはもっと、「等身大の」「私」の姿が歌われているように見える。
〈愛いつ〉で思い悩んでいるのは、「私」というよりは、もっと一般的な「君」だが、〈永久〉では悩みが「私」自身の内側にある。
〈永久〉は、〈愛いつ〉〈アイ10〉の二曲に比べれば、アイドルとしての十年を背負って生きる、プロフェッショナルアイドルBerryz工房というよりは、二十代の前半の、等身大の「私」の姿が描かれているように見える。

 ここで、〈ロマンス〉の次の歌詞を見てみよう。

 

ああ 素敵でしょう
素敵でしょう
私達の選択

未来を信じ
過去を愛し
笑顔の力あり 〈ロマンス〉

 

 この部分の歌詞は、作品の内側から考えるか、Berryz工房の活動停止という事実を踏まえて考えるかによって解釈が大きく分かれるところだが、ここでは、「活動停止」を踏まえて聞いてみよう。すると、やはり、「素敵でしょう 私達の選択」は、活動停止、というBerryz工房たち自身の選択、あるいは決意のことを歌っているように聞こえる。

 

 


Berryz工房『ロマンスを語って』(Berryz Kobo[Speaking of Romance ...

 


 そうした「決意」は、〈永久の歌〉の歌詞でも「忘れないあの日の歌」「離さない掴んだ思い出」のような形で、歌われている。

たとえば、次の歌詞。

 

3歳(みつ)子の魂
100歳(ひゃく)までって言うけど
Say Yeah!
この全てを未来に繋ぐよ 〈永久〉

 

 ここでは、「(私達は)この全てを未来に繋ぐんだ」という、未来に向けての決意が歌われている。ちなみに、この部分は、二番では、

 

ただガムシャラに
来たように思うでしょ
Say Yeah!
ない知恵なりに考えてたんだよ 〈永久〉

 

 である。

 ここで着目したいのが「Say Yeah!」の位置だ。

 

「3歳の魂 100歳までって言うけど」
「ただガムシャラに 来たように思うでしょ」

 

 前者はことわざであり、後者は、「私」(Berryz工房)に向けられてきたイメージである。それは、どちらも、「ほかの誰か」が作った言葉やイメージだ。Berryz工房はそうして誰かが作った言葉を「Say Yeah!」とさえぎり、「この全てを未来に繋ぐよ」「ない知恵なりに考えてたんだよ」とほかの誰のものでもない、自分の自身の言葉を歌う。

 ここには、Berryz工房が、与えられた言葉やイメージに沿って生きることではなく、自分自身の意志で決意し、言葉を掴み取る瞬間があるのではないだろうか。

 

 すなわち、《愛いつ/アイ10》が、アイドルとして生きる「私」の歴史を歌っていたとすれば、《ロマンスを語って/永久の歌》は、アイドルとしての今を歌うのではなく、そうした「今」の上に立つ、一人の「私」の決意や未来を歌う曲であるということができるのではないか。

 

《愛いつ/アイ10》は、Berryz工房が、十年のキャリアを引っさげたアイドルとして、アイドルとして生きてきた人生を、堂々と見せ付けるような、そんな「アイドルとしての誇り」を感じさせるシングルだった。
《ロマンス/永久》は、そうして「アイドルとしての誇り」を十年かけて積み上げてきたBerryz工房へのリスペクトにあふれた曲であると同時に、Berryz工房のメンバーとして、ではなく、一人の若者として未来を選択し、そのステージの先へ歩いて行く、Berryz工房の七人の未来への応援歌でもあるのだ。

 

 だから、アイドルとして生きる只中にあるBerryz工房の覚悟の重みを歌う〈アイ10〉に対し、〈永久〉には、アイドルとしてステージの上で歌を歌うことの夢や希望が溢れている。Berryz工房の描いた十年間の軌跡のきらめきを、Berryz工房のファンが、そして、Berryz工房たち自身が忘れないように。

〈永久〉のMVには、そんなBerryz工房がステージから去り、未来へ歩んで行く後姿を見ることができる。彼女たちは、ステージを去る前に、カメラを一瞥するのだが、その表情は七人七様で、「個性のBerryz工房」のひとつの集大成をみることができるだろう。

Berryz工房のメンバーが、活動停止前最後に、カメラの前にいるファンたちにどのような表情を見せてくれるのか。それは、ぜひ、MVで確認してみてほしいと思う。

 

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