ニワノトリ

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(ハロヲタが)一人で、一階席後方から見た、大森靖子全国ツアー「❤爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー❤ノスタルジック中野サンプラザ」後編

この記事の続きです。

niwanotori.hatenablog.com

 

この記事では、全体的なステージの感想などを書いてます。

 

■あれ、こんな曲だっけ、的な。

私が前回行った大森さんのライブは12/31のカウントダウンライブだった。
だから、実に4ヵ月ぶりに大森さんのライブを見たのだが、あれ、これってこんな曲だっけ? と思う曲が多かった。

 

それはもちろん、失望とかそういうものではない。
私が思い描いていた曲の像が、同じ曲によって思いっきり塗り替えられる、そんな体験をした。

 

まず、バンド編成で初めて聞く曲が幾つかあったというのが大きい。
『エンドレスダンス』『君と映画』『呪いは水色』など。
弾き語りで聞くもんだと(勝手に)思っていた曲がバンド編成になっていた。まっすぐ突き刺すようなギターの音と歌声だけで成り立っていた弾き語りの曲が、心地よいバンドのサウンドに乗り移っていた。突き刺されるというよりは、音楽に包み込まれるみたいな気分になった。

 

中でも、一番びっくりしたのは、『KITTY’S BLUES』。
この曲が弾き語りで始まって、バンドに移行していく……というバンド編成の展開は、すでに他のライブで体験したことがあったのに、中野サンプラザで聞いた 『KITTY’S BLUES』はこれまでに聞いたどの『KITTY’S BLUES』とも違った。聞き終わる頃には、何だか、まったく新しい曲を聞いたような気分になっていた。バンドの音がキティの憂鬱を包み込んで、違う場所へ連れて行ってくれたような後味があって、聞き終わった後しばらく、不思議な心地よさに酔いそうになった。

 

 

そもそも、初めて生で聞くという曲も多かった。
『おまけ〜スーパーフリーポップ〜』『焼肉デート』あたりは、これを生で聞けるはずないとなぜか思い込んでいたので、CDの音が再現される……以上に凄い、バンドの音に料理されまくっていて、何かすごい裏切られた気分だった。中野サンプラザで聞いた曲は殆ど、「この曲はこうだろう」という私の思い込みを裏切って、あっさり上書きして行った。置き去りにされた気分。なのに、音楽はすごい心地よくて、私はますます大森靖子に夢中になってしまった。

 

違って聞こえたのは、バンド編成の曲だけじゃなかった。弾き語りの曲もそうだった「魔法が使えないなら」なんて、「あれ、こんな曲だっけ」と思った。
もっと死にそうな曲だと思っていたのに、真剣に聞けば聞くほどキリキリとエネルギーを削られるような曲だと思っていたのに。
中野サンプラザで聞いた「魔法が使えないなら」は、聞いていて私を覆っている鱗がボロボロ落ちて行くような、心の底に響いて来るような、柔らかい力強さがあった。突き刺すような音というよりは、聞いているこちらの何かをゆっくり暴いていくような、剥き出しにされるような、そんな感覚。私が知ってる「魔法が使えないなら」じゃなかった。あまりに私が知っているのと違うから、少し恐ろしくなった。「魔法が使えないなら」だけじゃなくて、この4ヵ月で何があったんだろう、と思うくらい、とにかく、色んな曲の一音一音が全然違って聞こえた。大森靖子のスピードの速さは凄まじい。

 

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■ミラーとしての大森靖子

中野サンプラザはホールなのでステージを見降ろすような構造になっている。
ライブハウスでは、客は全員、ステージの上にいる大森さんを見上げるような形になるから、それとは逆だ。ライブハウスの大森さんはいつも、ステージの上から、客席に視線を落として、お客さん一人ひとりと目を合わせるようにして歌をうたってくれる。
しかし、中野サンプラザではそうはいかない。大森さんが最前のお客さんと目を合わせようと目線を下げれば必然的に、一階席後方や二階席から目線がずれる。それは、ライブハウスと比べると、少し寂しい。

 

……と思っていたのだけれど、最後の最後、『マジックミラー』という曲が始まって、ステージの後ろに大きな鏡が現れた時に、そんな寂しさは消え去ってしまった。

 

アンコールで現れた大森さんは、7月15日に『マジックミラー』というシングルを発売する告知をした。
その際、「みんなの姿をそのまま映し返すような芸術になりたい」(大意です)というようなことを言っていた。
そして、その言葉をそのまま再現するかのように、『マジックミラー』を歌う大森さんの後ろに、巨大な鏡が現れた。
客席が明るくなり、鏡には、一人ひとりの観客の姿がしっかりと映し出されている。


大森さんは確かに、大森さんの音楽を通して、客、一人ひとりを見ているのだと思った。
それは、目線が合うとか、それだけの話ではない。
私が彼女を見つめれば、大森靖子の音楽は、じっと、こちらを見つめ返してくる。

 

 

 

 

***

 

私が大森さんに出会ったのは、昨年の四月なのですが、それから1年。
私は、ツイッターで何人もの大森さんファンに出会いました。

 

私のツイッターのTLには、大森靖子を聞いた人たちの、膨れ上がった欲望、自我、嫌悪、憐憫、夢、希望。など。色んなものに溢れています。
大森さんの音楽が、言葉が、振る舞いが、心のどこかを引っ掻いて、そこから溢れ出す感情。
それが、140字の中に、あるいは140字を超えて、言葉になったり、絵になったりして、TLの中に噴き出しては、流れて行きます。
言葉や絵の中に現れる切迫した感情は、加速することを止められないかのように、噴き出し続けて、ツイッターのTLに、インターネットの中に、ドロドロとした欲望の海を作り出していく。しかし、そこを漂う言葉や絵は、時に美しく、切実な響きを持って、それを眺める私の目をくぎ付けにします。

 

ステージの上の大森さんは、時に老婆に見えたり、時に17歳の高校生に見えたりします。
私はステージの外側でも、大森靖子さんファンの方に、色々な体験を覗き見させてもらってきました。
お母さんに学校をサボってライブに行くことを謝る瞬間の緊張。大森さんの髪の毛に鋏を入れるその感触。東京までの道のりの遠さ。それを確かに飛び越えるその 瞬間。大森さんのライブと共に故郷に帰る時の閉じ込めきれない感情。大森さんをイベントに呼ぶ高揚感。「大森靖子みたいに」と詩を紡ぐ時の清らかな気持ち。気持ち悪いくらいの何千字にも溢れ出す熱量。ある人の言葉を借りれば、色んな人が大森さんによっていろんな「初体験を奪われて」いました。
私は、インターネットの端っこで、そんな人たちの内側にある色んな気持ちの端っこに、ちょっとずつ触れて、受験生になった気分になったり、主婦の気分になったり。色んな体験をさせてもらいました。

 

 

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大森靖子という人の音楽は、人の心のある一部をきゅるきゅると加速させて、外に溢れ出させてしまうようで、上に書いたような、私が目にしてきた、言葉や絵は、大森さんに感化はされてはいるのですが、そこに透けているのはむしろ、その人たち自身の人生であったり、辛さであったり、喜びであったりしました。
大森靖子というミラーに自分を映して、自分を絞り出して、そこに絵とか言葉とか歌とか音楽とか、いろんなものが生まれようとしたりしている。
何かを生み出すということは、生み出したものに対して責任を引き取らないといけなくて、確かに、大森さんという鏡は、そういう責任ごと引き受けさせ、生み出してしまうような、そんな魔法のような力を持っています。

 

だから、『マジックミラー』で突然現れた「鏡」を見て、妙に納得してしまって……なんだか、すごい腑に落ちるような、すごい的確なパンチを正確な急所にくらったみたいな気分になって、私は、『マジックミラー』を演奏している時には、呆然としてしまいました。
なので、曲自体はきちんと聞けてません……そんな大森さんが、どんな言葉で「鏡」を歌うのかとても気になります。7月に、私のWMPに『マジックミラー』をお迎えするのが楽しみです。

 

アンコールの最後の曲は、『ミッドナイト清純異性交遊』。
『ミッドナイト清純異性交遊』を歌う大森さんは、横浜アリーナでの卒業公演でさゆが着ていたみたいな、花畑みたいな服を着ていました。
それを見ながら、きっと、大森さんが横浜アリーナのステージに立つときも来るんだろうな、と、なんとなく、そんなことを考えました。その時も、大森さんはきっと、見たことないような素敵な衣装を着てるんだろうな。

新しいシングルを出して、どんどん新しい音楽を作って、きっと、大森さんはすごい速度で向こうへ行ってしまいます。
私自身も、鏡をただ眺めるだけじゃなくて、その鏡に映った自分自身に対して責任をとったり、何かを生み出したりしていかないとなあ、と思います。

 

***

 

たっぷり二時間以上。入場した頃には明るかったのに、ライブが終わったら、もうあたりはすっかり暗くなっていました。

 

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今回のライブ、すごくいい意味でスッキリするライブでした。
ライブが終わるころには、ああ、私の今日こそはじゃなきゃダメだよの精神で、明日からがんばろって思えました。
すごくいいライブ でした。大森さん、バンドメンバーのみなさん、スタッフのみなさん、大森さんファンのみなさん、ありがとうございました。
視界をクリアに、速度を上げて、明日から頑張ります。

 

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会場にはすごいお花が届いてました。

 

***

 

書いているうちに、いきなり、これまでの1年間を振り返ったりしてしまったこの記事ですが……。
これには理由がありまして。

 

このブログ、4/26で、初めて大森さんについての記事を投稿してから丸一年を迎えましたー。

 

っていう超個人的な理由です……。
この一年間、ある程度継続して、大森さんのライブに行って、ブログの記事を書いてきて、ネット上ですけど色んな人に出会って、すごいいい影響をもらったなって思ってます。ありがとうございました! 

 

 

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