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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

(ハロヲタが)一人で行った『大森靖子×根本宗子 ねもしゅーせいこ「夏果て幸せの果て」』(日記というよりはフィクションです)

■『大森靖子×根本宗子 ねもしゅーせいこ 「夏果て幸せの果て」』を見に行ってきました。

 

6/6、舞台、『大森靖子×根本宗子 ねもしゅーせいこ「夏果て幸せの果て」』の昼公演を見に行って来た。
一人で。
まだ上演中だから、あまりネタバレをしないように僕の私情にまみれた感想を書く。

 

(ネタバレ皆無ではないのでご注意ください)

 

 

その僕の「私情」に関係するので、最初に、僕の近況から書かせてもらいたいと思う。誰も読みたくないかもしれないけど付き合ってくれる人は付き合ってください。

 

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僕と同じ時期に入社したあの女はたまたま僕と同い年で、しかし、学歴は僕よりも上だ。

彼女は来客用のコーヒーを用意するために席を立ち上がる時、向かいの席で座ったままの僕をちらっと見てから給湯室に歩いていく。同期で、同い年で、立場が似ていても、僕はカップの置き場所も知らない。この会社ではお茶くみは女の仕事。どんなに古い会社なんだと、彼女の高学歴の頭はイライラ煮えくり返っているのかもしれない。そうだよな、面接ではお茶汲み担当がどうなってるかまでは分からないもんな。お前、転職失敗したかもな。この会社はベンチャーの癖にそのあたりは古いんだ……

だけど、自分から「僕もやるよ」なんて言うつもりはない。僕は毎日、社長から飛んでくる説教メールへの対応で手一杯だ。入社して二ヵ月。「お前本当に分かってねぇな」「お前の資料なんて一枚も使えねぇよ」と叱責されること数十回。社長は、入社してすぐ僕のことを「お前」と呼び、彼女のことは名字にさん付けで呼んだ。僕は確かに仕事ができない。だけど、同じミスをしても、僕にばかり罵声が飛んでくるのは何故なんだ。

 

あいつだけがお茶汲みに立ち上がるとき。
社長が説教するために、僕を会議室に呼び出す時。
あいつと僕は互いの間に境界線を引く。

 

「男には分かんねぇよ」

「女には分かんねぇよ」

 

僕はあいつが年下の先輩と乾いた談笑をする給湯室に入れないし、やつは僕が呼び出された会議室には入れない。

 

 

最近、そんなことばかり考えているからだろうか。

僕が入れない給湯室の奥の奥の奥にはこんな世界が広がっているのだろうかと、そんなことを考えながら「ねもしゅーせいこ」を見た。

舞台の上の女たちは余計な感情をぶら下げ、余計な理屈をぶら下げては、余計な電話をかけ、余計な汗をかき、余計な妄想をしていた。
余計余計余計、矛盾矛盾矛盾。
女たちは無駄に叫び、無駄にしゃべり、無駄に傷つき、無駄なコミュニケーションをする。
コンビニのバックヤードで、自分の部屋で。
女たちの余計な感情の襞が爆発し続ける。その面倒くささに、胸が張り裂けそうだ。この感情の全てを受け止めるなど、僕にはできやしない。

"男には入れない、男には見せない女たちのバックヤードを覗き見する。"

僕にとって、ねもしゅーせいこはそんな舞台だった。

 

彼女たちは、男の入れないバックヤードで、面倒な感情を振り回し、振り回されていた。見るだけでぞっとしてしまいそうな数の着信履歴ですらも、彼女たちの内側で暴れる感情のほんの一部、氷山の一角に過ぎない……そんなことを思い知らされて、舞台を見ながら僕の胃はひどく重くなった。

 

余計な感情に余計な矛盾、余計に高いテンションに、それただやりたかっただけだろうみたいな演出。舞台をはみ出すほどに「女の子」の全てを詰め込んで、やりたい放題のお芝居を、僕はどう受け止めればいいのか。そこにあるのは女の子の部屋の奥。彼氏が来るからと言って綺麗に片づけられた部屋……ではなくて、皺だらけの服や生理用品や元カレの手紙が突っ込まれた押入れの中を覗き込んでいるような……そんな世界。
果たして、そんな私的な世界を僕が目撃してもいいのか? 
舞台を見ながら、僕は肩身が狭くなった。あの舞台に必要とされる男など、鳥肌実以外に実在するんだろうか。

 

しかし、そんな僕の肩身の狭さは、最後に流れた「イミテーションガール」で払拭されてしまった。

 

 隠してるんだからいいでしょ

 

 ぼくが抱きしめられなかった あの子の声

 「おかえり」

 

 

 

この舞台はきっと「僕が抱き締められなかったあの子」の声なのだと思った。

僕の腕の届かないところにある女の子の感情。どうせ僕の手など届かないだろうと、女の子が心の奥底に折り畳む感情。
それをそっと……いや豪快に掴みあげて、僕の前に「見て見てすごいでしょ!」と突き出してくるような。「だけど、普段は隠してるんだから、いいでしょ」と微笑みかけられているような。

ねもしゅーせいこは、そんな、僕の入り込めない給湯室の世界を、90分だけ、体験させてくれる舞台だった。

 

その世界を分かりたいかどうかと聞かれると……乙女はわかんないわかんないし、悪くない悪くない放課後のディスタンスくらいの方がいいのかもしれない。

給湯室でカップを洗うあいつも、クールな笑顔の下にこんなにしちめんどくさくてドロドロした感情を隠しているのだろうか。
そう思うと、やっぱり少しぞっとしてしまう。しかし、同時に少しワクワクしてしまうのは、ねもしゅーせいこが、ドロドロをワクワクに変えるような舞台だったからかもしれない。
でも、ワクワクできてしまううちは、やっぱり、まだ、乙女をわかんないわかんないままなのかもしれない。 

 

 

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