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松居大悟監督『私たちのハァハァ』@テアトル新宿 先行上映(2015/08/11) 一ハロヲタの感想文

こんにちは。
先日、松居大悟監督『私たちのハァハァ』の先行上映@テアトル新宿に行ってきました。

松居監督+主役4人の舞台挨拶つき! 
上映終了後には松居監督のサイン会もあり、主役のうち二人(大関れいかさんと真山朔さん)と握手もできました。もちろん、どっちも意気揚々と参加しました。

 

f:id:n1wator1:20150816191817j:plainサイン!サイン!

 

 

公開は9月と言うことで、「私たちのハァハァ あらすじ」で検索してこの記事にやってこられる方もいらっしゃるかと思いますが、映画のあらすじや雰囲気に ついては、下記の公式サイトや予告編を参照していただくとして……(たまに、予告編みてワクワクしながら見に行ったのに、実際に本編始まったら「思ってたんと違う!」ってなることがありますけど、この映画についてはそういうことはあまりないと思います)。

 

 

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haa-haa.jp

 

 

参考情報かつ備忘録として、以下、この映画を見て「いい映画だなあ」と思った一観客の感想文をあげておきます。できるだけネタバレしないように書きますが、皆無ではないです。

 

 

 ■「クリープハイプ(;´Д`)ハァハァ」〜『私たちのハァハァ』はこんな話でした

 

『私たちのハァハァ』は、北九州に住むクリープハイプというバンドのファンの女の子4人が、クリープハイプに会う(=ライブに行く)ために東京に向かうお話です。

 

4人とも高校生。親の許可も得ず、家出同然で家を飛び出しているので、もちろんお金とか持ってません。通学に使ってるママチャリで北九州を飛び出すところから始まり、ヒッチハイクをしたり、野宿をしたり……彼女たちは髪の毛を汗でどろどろにしながら、夏の西日本を横断して行きます。
彼女たちの最終目的はクリープハイプのライブなので、ライブ開始までに東京につかないといけないというタイムリミットがあります。

「○日後には私たちは東京にいて、クリープハイプに会ってるはず……!」

という未来図を思い描きながら彼女たちは自転車を漕いでいるわけですが、想いが募る割に、東京までの距離は遠い。漕いでも漕いでも全然つかない。関西すらなかなか見えて来ない。確かにゴールはあるはずなのに全然ゴールが見えて来ない、果ての見えない長い道のり中で、彼女たちはいろんな形で息切れをします。

身体的には殆ど常にゼェハァ言ってますし、旅がうまくいかなければ「クリープハイプの会いたい!」というテンションだって下降するし、逆に「クリープに会うんだあああああ」ってテンションうわあああって上がったりするし。彼女たちは仲良し4人組だけど、全員が全く同じ気持ちで東京を目指しているわけでもないから、そのズレが時に彼女たちをぎくしゃくしたりもする。
体力も思いも関係性も、高ぶったり、疲れ果てたり、色んな息切れをします。彼女たちを北九州の外に押し出した「クリープハイプに会いたい」「クリープハイプ(;´Д`)ハァハァ」という気持ちは、九州から東京までの長い距離の中で、色んな「ハァハァ」を引き起こしていく。
……みたいな!
『私たちのハァハァ』は、そんな、色んな「(;´Д`)ハァハァ」を見せてくれる映画でした。

 

 

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■青春は追い抜けない

 彼女たちはもう、本当にずっと「ハァハァ」しています。自分が呼吸をするのに必死で、周りがあまり見えていません! 
「自分たち(女子高生)が東京を目指していること」が人にどういう風に見られているのか、ということを認識するための、俯瞰の視線が不足していて、彼女たちは時に浅はかとしか思えない行動もとります(予告編にも出てきますが、Twitterに自分たちの旅情報を上げて炎上したりとかする)。 

だけど、私がこの映画を「いい映画だなあ」と思ったのは、彼女たちのそういう時に浅はかに見えたりもする必死な「ハァハァ」から、「Twitterに安易に投稿するのはやめましょう」みたいな教訓はもちろん、「若いうちに旅をしよう」「なんだかんだあるけど、青春っていいよね!」みたいな、形ある結論を引き出したりはしていない(ように見えた)ところでした。

青春って、多くの人が経由するものだから、誰にでも、割と容易に、心配とかお説教とかができるものだと思うんです。「女の子は野宿したりしちゃいけません、危ないから」とか、「学生なんだから、ライブ行くより勉強しなさい。後で絶対後悔するから」とか。彼女たちがこれからたどるであろう道を先回りして、「そんなんだとよくないことになるよ」って忠告して、「この先危険!」と通せんぼすることができてしまう。実際、青春をすでに終わってしまった私は、映画を見ながら、Twitterに写真を上げたり、野宿したりする彼女たちに「えええええええやめなよおお、絶対危ないよおおおお」とすごく心配したりしてしまいました。

が。この映画では、そういう「先に起こるかもしれないリスク」についてはあまり描かれていませんでした。むしろ、そういう「危ないからやめな」って言われて、自分でも「そうだなあ」って思って、諦めてしまうような行動であるとか。先の事を考えて、引っ込めてしまう気持ちであるとか。
『私たちのハァハァ』は、そういう、自分の内側から沸きあがる気持ちを引っ込ませずに、外に出すことこそを重要視して、俯瞰できない、先回りできない気持ちを、スクリーンに映し出そうとしているように見えました。
なので、ストーリー的にはそこまで、4人のその浅はかさがもうとんでもない事態を引き起こして、本当にもうどうしても取り返しがないほどすっごい痛い目を見るとか、そういうことはあまりないです(でも、えぐさの入口みたいなものはある)。そういう点では、割と安心して見られる映画だと思います。
むしろ、「いやー、そううまくはいかないでしょー」と突っ込みたくなったり、「この子たち、よくもまあ、そんなんでここまで来れたな……」とか呆れたくなるくらいかも。

でも、この映画は、そういう「こういうことがあったらたいていこういう結末になる」という現実感はあまりない(かもしれない)代わりに、青春のただなかに放り込まれて、沸きあがる感情の熱量の現実感みたいなものがすごく溢れてました。
彼女たちの青春を追い抜くことなく、彼女たちにずっと寄り添っている映画だったので、映画を見ながら、自分の青春を思い出したり、自分の思い出をなぞるというよりは、ただただ、主役4人の熱の発生を、90分間じーっと体感している感じでした。


見るなら、やはり、暑くて、空が高くて真っ青なうちに見た方が季節的にちょうどいいと思います。9月になったらぜひ、できるだけ早めに見に行っていただきたいです。

 

 

 

■謎の4人組

 

主役の女の子は4人。クリープハイプの「ファン」が主役なので、有名な女優さんよりは、(今は)あんまり有名じゃなくて、演技にも慣れていない「生」な女の子がいいというような主旨で、あまり演技になれていない子たちがキャスティングされた……そうです。

 

その4人の中で、唯一、演技経験があるのが、文子演じる三浦透子さん
文子は、一番ディープなクリープハイプファンで、文子のクリープハイプへの想いのこじらせっぷりは、キラキラ……というよりは、むしろギラギラしてます。
このこじらせっぷりがかなりリアルで、私は私の黒歴史を思い出させられて「うあああああ、痛い痛い」ってなってちょっと直視できないくらいでした……。たぶん、会場の半分以上が、私と同じようなダメージを受けていたんじゃないかと思います(笑)。

私が、個人的に映画全体を通して、一番目に焼き付いているのは、三浦透子さん演じる文子が、クライマックスのあるシーンで一瞬見せる表情です。
その時のふみ子は、本当に、時が止まったみたいな表情をしていて、あのシーンだけでも、ぜひみんなに見てほしい!と思いました。

 

一ノ瀬役の井上苑子さんはすでにメジャーデビューをしているシンガー。

 

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一ノ瀬本人も、ギターで弾き語りをする、「表現したい」という思いをもっている女の子です。舞台挨拶で、井上さんご本人のキャラと、一ノ瀬のキャラにギャップがあるかも……という話が出ていたのですが、確かに、かなり、結構関西人ノリの井上さんと、どこか冷めていて一歩引いてほかの三人を見ている一ノ瀬の間には割と距離がありましたw 
が、「自分を表現したい」という気持ちを抱えている子が持つ、目の輝きというか。この田舎を飛び出したい、この田舎になじんでしまいたくない、もっと世界は広いはずなんだという、一ノ瀬の気持ちは、実際に歌を歌っている井上さんだから表現できたものなのかな、と思います。

 

vineで有名な大関れいかさん演じるさっつんは、たぶん、一番、「いるいる」感がある子だと思います。「うちのクラスで言うとあの子」みたいに、すぐに具体的な名前が出て来るかもしれない。で、さっつん本人も、自分の「いるいる」感を分かって、そういうキャラをやっているのかなっていう、なんていうか、そういう子が持ってる、普通の子の、普通の子としての、普通だけどぜんぜん普通じゃないつらさ、みたいなものも感じられたりしました。見ていて、一番つらくなったり、切なくなったりしたのは、さっつんだったかもしれないです。

 

 

チエ役の真山朔さんは、舞台挨拶で「あれ、この子見たことあるなー……あ、!イミテーションガール!」ってなった。

 

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映画が終わった後に、握手をしてもらったんですけど、その時に、私が「あ、あの、イミテーションガールの……」ってぼそぼそ言ってみたら「あー!嬉しいー!」って笑顔で、手を強く握ってくれて、なんか、そのまっすぐな感じが、すごく……チエです……っていう感じでした。そして、パンフレットを読んだら、パンフレットのコメント欄まで、すごくチエで、真山さんを見てると、『私たちのハァハァ』がそのままリアルに私の目の前に現れたみたいな感じがしました。

 

 

個人的には、この4人。あー、こういう子いるなーっていうあるある感もありつつ、個性も性格も雰囲気も結構バラバラで、この四人がどういう経緯でグループになったんだろうって考えるだけでも楽しかったです。

 

■ファンの映画 

 

 

以下、ネタバレ増えるよ!というか、結構全開だよ!

 

 

 

 

 

パンフレットによると、この映画は「ファンが主役の映画」というのがコンセプト(?)の一つなんだそうです。

 

「劇団や映画の宣伝でTwitterを始めてから、エゴサーチをするようになったんですよ。そしたらもう、ファンの声が作品よりも先に行っているというか、解釈がすごく深くて。その子たちがそれを見たことによって、ほんの少しだけ変わって行くのを客観的に見ているこの感じって、何なんだろう……と思うようになったんです」(パンフレットより、松居監督)

 

私は、この記事のタイトル通り、ハロヲタで、ハロプロ好きアーティストの大森靖子さんという方も好きで、このブログもまさしくファンブログ以外の何物でもないと思うのですが、そういう、一人の「ファン」としてこの映画を見て、この映画でとてもうらやましかったことがありました。

それは、この映画が一方通行で終わったことです。この映画は、彼女たちが「クリープハイプに会いに行く」映画です。「会うまで」の映画で、「会った後」についてはあまり描かれてない。

ライブって、行ったら帰らないといけないじゃないですか。
この映画のラストシーンを見て、私は、去年の秋のBerryz工房のコンサートに行った時のことを思い出しました。たまたま、座席番号一桁代のチケットが取れて、すごい間近でBerryz工房が見られたんです。そのライブがあまりに幸せ空間過ぎて、どうしても、家に帰りたくなくて、その日は、マンガ喫茶に一泊しました。次の日は家に帰りましたけどね。

4人も「あっちの世界」「こっちの世界」っていう言い方をしていましたが、ファンにとっては、やっぱり、ライブっていう「あっちの世界」から、家に帰って、こっちの、ごくふつーの日常生活が始まっちゃうまでがライブ、みたいなところあると思うんですよ。

でも、この映画は、元の世界に戻る直前で終わりました。

私は、Berryz工房のラストコンサートの日も、大森さんのライブが私の人生変えてくれた!って思った日も、結局、日常生活に帰らないといけなかったから、「クリープのライブ」を、特別な瞬間のまま、特別な日に閉じ込めたまま、東京の街に消えて行った彼女たち4人が、ちょっとだけうらやましかったです。

 

 

 

以上、とりとめがなくてすみません。

ハロヲタの『私たちのハァハァ』の感想文でした。

前売り券も買ってしまったので、後日、もう一回見に行ってきます。

 

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