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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

アンジュルム/福田花音『わたし』は全ドルオタへの最強のプレゼントだ(と勝手に思っている話)

ハロプロ 楽曲感想

 

 

■アイドルの「卒業」を目の前にした、オタたちの苦悩について

 

アイドルが卒業を発表したり、結婚を発表したりするたびに、TwitterのTLは大騒ぎだ。
「やめないで!」「でもあなたの決断を応援したい!」の二つの気持ちの間で、揺れるオタたちのツイートは実に切実で、いかに、多くのファンたちが、明日の仕事をやり抜くために、今週の学校を乗り切るために、アイドルのライブに、CD一枚に人生を賭しているのかがよく分かる。

オタのこの切実さの裏にあるのは、自分の抱える気持ちの大きさと、アイドルと自分の関係のアンバランスさだ。
どんなに好きでも、どんなに私が「あなたしかいない」と思っていても、私とアイドルの関係は「アイドル対オタ」でしかない。現場という非日常空間で私があなたに会えてうれしかった記憶は私のものでしかなくて、自分の日常生活の糧としていくしかない。あなたにとって私は、ライブ会場でサイリウムを振ってくれる暖かいファンの人たち、のうちの一人、なのだ。

 

オタはその他大勢のオタのうちの一人であり、そのことを自覚していなければならない。その自覚を忘れてしまった時に、オタは迷惑オタになる。

 

 

……そうした「私は大勢の一人」という関係性のアンバランスさに、多くのオタが、「じゃあ、この胸の内の思いはどうすればいいの!!」と感情を持て余した経験があるのではないだろうか。

 

私はそうした経験のあるオタである。
こうしてブログでライブや楽曲の感想文を延々と描くくらいには気持ちを持て余している。

 

 

そうしたオタ語りを経た上で……。
恐らく、こんな僻地のブログにたどり着いたことのある方は一度は聞いたことがあるはずのこの曲。

 

www.youtube.com

 

 

アンジュルム、福田花音作詞作曲の『わたし』。

 

この曲がいかに、オタにとって「神」のような曲なのかということを語らせて頂きたいんです!!!

 

■「好きになって欲しい」ではなく「好きになるって言って欲しい」


作詞家を目指して、2015/11/29にアンジュルムとハロプロを卒業したまろ様、福田花音
その翌日、彼女はさっそく福田花音名義でTwitterを始め、各方面にリプを飛ばしまくる、質問募集をかけてTwitterのトレンドを騒がせまくる、などのTwitter芸を発揮している。

 

 

 

ハロプロの)アイドルであった頃にはできなかったであろうこの芸当。
この転身っぷりはいっそ清々しく、オタたちは福田花音は29日を境に完全にアイドルを卒業したのだという事実をもう認めざるを得ないだろう。

 

……となると。
である。

 

『わたし』は、福田まろ様が、「アイドルとして」作詞し、歌った、最初で最後の曲であると言えるのではないだろうか!!!!!!

 

 

 

 

 

 

少なくとも、私は、『わたし』を聞いた時、アイドルとしてこの曲を作り、歌ってくれるまろ様は真のアイドルだと思った。

 

『わたし』は「(アイドルという)肩書き」をテーマにした曲で、単純に言ってしまうと、「例え私がアイドルじゃなくても私のこと好きになってくれる?」というような曲なのだが、そんな単純な曲でもない。

 

というのも、例えば、以下のようなサビの歌詞

 

たとえわたしに何の肩書きも
才能さえもないとしても、
わたしのこと見つけ出して、
好きになると言えるかな?

 

まっさらなわたしだとしても、
好きになるって言って欲しい

 

ポイントは「好きになると言えるかな?」「好きになるって言って欲しい」の「言えるかな?」「言って欲しい」の部分だと思う。

この曲が問うているのは、まろ様がアイドルではないifの世界で実際に「好きになるかどうか」ではなく、「「まろがアイドルじゃなくても好きになるよ!」と言うことができるか?」というオタ自身の覚悟であり、想いの真剣さなのである。

 

まろ様がアイドルになっていなければ……
ハロプロに入って、スマイレージとしてデビューしなければ……
オタは、まろ様の前に広がる風景(と書いてサイリウムと読む)の一部となることはなかっただろうし、まろ様に出会うことも、好きになることもなかっただろう。

アイドルという肩書なしに、私たちがまろ様に会うことはなかった。

 

……『わたし』という曲は、そんなことは百も承知なのだ。
その上で「(そんなことはあり得ないと分かっていても)それでも、好きになるって私に言えるの?」とオタに聞いて来る。

 

「わたし(アイドル)とあなた(オタ)」の関係性が、「アイドル対オタたち」という一対多数という関係性ではなかったとしても、「わたしを好きになる?」と聞いてみる……。
そんなことをしながら、『わたし』が問うているのは、「あなたがどう答えるのか」というオタ一人ひとりの気持ちであり、「あなた」が「わたし」に向ける気持ちの真剣さである。

 

『わたし』という曲は、そのタイトル通り、アイドルという「わたし」が、一対多数という関係性を飛び越えて、「わたしとあなた」の一対一の関係性について問うてくる一曲なのである。

 

 

 

 

■まろ様はオタの罪をお許しになった

アイドルの方から、一対多数の関係性を飛び越えて、「あなたとわたし」の関係について歌ってくれる。

こんな「神降臨」が他にあるだろうか。

 

たとえわたしに何の肩書きも
才能さえもないとしても、
わたしのこと見つけ出して、
好きになると言えるかな?

 

「好きになるって言えるかな?」というこの歌詞が尊いのは、『わたし』を聞いている間、オタに「たとえアイドルじゃないあなたでも好きになります」と思うことを許してくれるところだ(と思っている)。

 

すなわち、アイドルが卒業すると聞いた瞬間に感じる
「え、やめないでよ!私の人生の柱なのに!」
「いや、でも、彼女には彼女の人生があるんだし、アイドルじゃない人生の部分にまで口出しなんてできない……」
という二重の気持ち。
私が応援しているのはあくまで「アイドルのあなた」であって、「あなた自身」ではないんだという、オタが自分の気持ちの上に引く境界線。

 

『わたし』は、アイドル自らその境界線を飛び越えてくる。
「あなたが好きなのは、アイドルのわたしなの? わたし自身なの?」という質問をぶつけてくる。
「まっさらなわたしだとしても、好きになるって言って欲しい」って言ってくれる。

 

『わたし』を聞いている間は、オタクたちは、自分の中にある「アイドル対大勢のファン」であるという意識を一瞬どこかに置いてきて、「例えば、あの子と一対一の関係になった時に、それでもあの子を好きになるって言えるかな」と考えることが許されるのだ。

いつもはアイドルと一対多数の関係でしかない、オタだが、『わたし』はその曲の中で、一対一の関係を結んでくれようとするし、一対一でしか持ちえないほどの重い気持ちの存在も認めてくれる。

『わたし』はある側面では、福田花音という一アイドルの、自意識をまるまるぶつけてくるような曲であるだが、だからこそ、この曲を聞いている間は、アイドルを好きなオタクたちの自意識も、その存在を許される(ような気がする)。

だから、私は、『わたし』はオタの「ただの一ファンなのにこんなに好きになってしまった」という気持ちを許してくれる、贖罪ソングみたいな面があるのではないかと思っている。

 

……というと、いささか大袈裟かもしれないが、しかし、少なくとも、アイドル自身が「わたし」と「あなた」の関係を歌ってくれる『わたし』というこの曲は、アイドルの自意識とオタの自意識がぶつかり合う場所を提供してくれているのであり、世界各地のオタにとって、とても大切な一曲になって行くはずだ。

 


ハロオタに限らず、全ての「アイドル」が好きなオタたちに聞いてほしい一曲である。

 

 

 

 

卒業前に、こんなドルオタキラーチューンを作って去って行くなんて、まろ様かっこよすぎると思います。
そんなまろ様がこれからどんな歌詞を生み出していくのか、すごく楽しみです。

 

**

 

 

余談だが、
まろ様も好きだという大森靖子さんは『ミッドナイト清純異性交遊』という元モーニング娘。道重さゆみさんについて歌った曲で、「(ファンの目線から見た)ファンとアイドルの一対一の関係性」を歌にしている(と私は思っている)のだが、それに対して、福田花音の『わたし』は、「(アイドルの目線から見た)アイドルとファンの一対一の関係性」を歌っている。そのような意味で、『わたし』は『ミッドナイト清純異性交遊』と裏表のような関係になりうる曲なのではないかと思っている。

 

 

 

www.youtube.com

 

 

この二曲を聞くと、ファンとアイドルが作る歪な関係や互いが差し向ける感情の歪なバランスが、「歌」の中で美しかったり、かわいかったりする形に変わって行く。そんな過程を目撃することができる。と思う。

 

ぜひ、併せて聞いて見て欲しい。

 

 

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