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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

一人で行った「GIRL’s PIC vol.03 Special Edition」(お目当ては大森靖子)

日記というよりはフィクションです 大森靖子 ライブ感想

 

 

※2016/10/30にSHIBUYA CLUB QUATTROで行われた「GIRL’s PIC vol.03 Special Edition」に行って来た話をしていますが、全然ライブレポではない、アラサーの一人語りです※

 

くらえ!30にもなって、振られた勢いでポエム書いちゃうこのみっともなさをくらえ!くらえ!!

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 既読。この、たったの3文字に打ちのめされるために、30年も生きて来たんじゃない。私のキャリア、私の研鑽。私が一人で積み重ねてきた30年は、3時間たっても3日たっても返って来ない返信に心を引き裂かれるほど、やわじゃない。絶対に人前で泣かないと決めていた。あの子たちが泣く映画で、私は泣かないと決めてやって来た。なのに、あの子たちが泣く恋愛映画によくあるシチュエーションで、私はあんなにも容易く泣いた。一人暮らしの部屋が広いなんて絶対に思わない。それでも、どうしても起き上がれない金曜日、あっけなく減った有給休暇に、私のプライドがすり減って行く。

 

 

現場が足りない。返信の来ない3日目の日に、私は渋谷に行った。とにかく、大森靖子のLIVEが見たかった。目標金額には程遠い貯金のことも、月末に引き落とされる奨学金のことも、気にしている余裕はなかった。

 

10月30日、日曜日の渋谷。おばけ、カボチャ、魔女、マリオ、ピカチュウ、PPAP。流行りもすたりもひっくるめた仮装の集団が、行く先も知らずスクランブル交差点を渡る。肩をぶつけないよう体を小さくした私の横を、黄色い声を上げる女の子たちが通り過ぎた。悪魔の仮装をしたその生足が、私の心をいとも簡単に踏みつぶす。赤い血糊を塗りたくっても、肌の瑞々しさまでは隠せない。小さい顔をくっつけ合い、少し恥ずかしそうに歩く三人組が何を恥じているのか、私にはもう分からない。彼女たちは自分の若さを惜しみなく信じている。誰もが彼女の若さに夢を見るのに、その夢に気付かないふりをして、無邪気な顔でスカートの丈を詰める。その溌溂としたエネルギーが、私を突き刺して離さない。

 

好みのタイプがあるのなら
生まれたときにそっと教えてくれれば
その通り育っておいたのに (剃刀ガール)

 

私があの子なら、こんな思いをせずに済んだのだろうか。
あの小さい顔で、好きです、とでも言ったなら、結果は違ったのだろうか。
できれば、三ヵ月前に戻りたい。何も始まらなかったことにしたい。三ヵ月前の私にはただ鬱陶しいだけだったはずの雑踏が、今の私をこんなにも惨めにさせる。

 

 

 

クラブクアトロに辿り着くと、そこに集った人たちは皆、一様にTシャツにパーカーを着ていて、私を安心させた。大森靖子赤い公園……色とりどりのライブTシャツの文字を追いながら、当日券を引き換える。自分の番号が呼ばれるのを待っていると、大森靖子の2016年ツアーグッズたる、「意識高いT」を着ている男の人が入場口に吸い込まれて行くのが見えた。

 

 

彼が意識しているものの存在が、今の私を慰める。

大森靖子のステージを見ること」「大森靖子の創る世界に、手を伸ばすこと」

早く、大森靖子という人に対峙することが、私の全てなのだと信じられる世界に行きたい!! 

 

 

 

 

ハイボールを呑みながら、開演を待つ。会場はすでに人の背中に溢れていて、階段を下りてしまうと人の背中でステージがよく見えない。会場後方、カメラマンさんの真後ろの一段高くなった場所に陣取ってみる。距離はあるけれど、三脚越しに、ステージがよく見える。良席❤

 

大森さんの出番は三番目だった。
一つ前のCharisma.comで、会場のテンションは上がり切っていた。
会場の真ん中に、ギターがセットされる。そういえば、大森さんの弾き語りライブは久しぶりだ。

 

一曲目の「TOKYO BLACK HOLE」は、2016年の新曲。なのに、「TOKYO BLACK HOLE」を歌う大森さんを見ながら、初めて大森さんのLIVEを見に行った2年前のことを思い出していた。もっと小さい箱だった。ステージはもっと小さくて、照明の数も少なくて、テレビなんて入ってなかった。だけど、あの時と同じように、大森靖子のギターの音は私の頬をひっぱたき、「そっちじゃなくて、こっちを見ろ」と私に囁く。「お客さんの顔が見たいので客電ください」。その台詞だって、2年前とこんなにも変わらない。

 

絶対女の子がいいな (絶対彼女)

 

www.youtube.com

初めて行ったライブでも、この曲が聞きたかった。そしたら、聞けた。
今日もそうだった。初めて大森さんを好きになったこの曲が、どうしても聞きたかった。そしたら、やってくれた。
大森靖子という人は、私がどんなに腑抜けでも、こんなにも私の期待を裏切らない。

 

けれど、現実はそんなにうまく行かないもので、どんなに集中して音を聞こうとしても、ことあるごとに、私の胸の中には、みっともない未練がぶり返すのだった。

 

さよならは すきときらいがごちゃごちゃ (SHINPIN)

 

大森靖子の歌詞が私の今を的確に描写する。そのたびに、思い出したくない「既読」の三文字に意識が取られる。大森さんの音楽が私に向き合おうとしてくれればしてくれるほど、「どうして向き合ってくれなかったんだ、一行でいいから、言葉をくれればよかったのに」と、振り向いてもらえなかった自分の惨めさを考えてしまう。

 

分かってはいたけれど、ライブは私の人生の全てではなく、私の現実を私の胸から消し去ってくれはしない。ライブも、音楽も、いつも私の現実の合わせ鏡だから、一瞬で全てを変えてくれるほど、都合よくも、甘くも、優しくもない。

 

音楽は魔法ではない (音楽を捨てよ、そして音楽へ)

 

そういえばずっとそうだった。どんなにかっこつけてポジティブなことをTwitterに呟いても、どんなに長いブログを書いても、私はいつだって「大丈夫な日の私」を大森さんに見せられたことなんてなかった。初めて大森さんのライブに行った2年前から、私はずっとダメだった。本当は積み重ねてきた確かなキャリアなんてありゃしない。「こんな28じゃダメだ」「こんな29じゃダメだ」と思っていた。そのまま30になった。どんな30なら私は「これでいい」と思えたのだろう。そうじゃないところでやってきたつもりでも、上司にチヤホヤされる新入社員を見るたびに、「もう若くない」現状が、「かわいくない」私の容姿が、真綿のように私の首を絞める。必死に働いてみたところで、月末にやってくる給与明細は大して額が上がらない。貯金の額を数えては、自分で自分の価値を保障できない自分を思い知る。

女はかわいくて馬鹿で若い方がいいんでしょ?
女の子は若くてかわいければいいなんて、時代錯誤でしょ?

どちらも「本当」ではないし、どちらも「絶対」ではない。どちらも選べない、どちらも信じ切れない自分に、ずっと、「こんなんじゃだめなのになあ」と思っている。
だから、「絶対」を歌ってくれる大森さんが好きで、ずっと憧れていた。憧れるばかりで、私だけの「絶対」をいつまでも手作りできなかった。だから、誰かの「それでいい」に、こんなにも簡単に足元を掬われて、失恋ごときで下手を打つ。

 

体ごとラブホテル
嘘だらけでしょう (キラキラ)

 

君は私をわざわざ呼び出して、「遊びじゃなかった」と言った。遊びじゃないなら、何なんだ。言い逃れでも何でも、返球してくれれば、僅かな期待だって捨てるのに。その一言がないから、交わした会話に、交わしたLINEに、君が言葉にしない「本当のこと」が隠れていたのではないかと、そればかりを探しまわってしまう。

 

本当に馬鹿な話だ。
いつも、最初から嘘ばかりなのに。

 

大森さんが歌う『キラキラ』を聞きながら、私は、ようやく、そんなことを思い出していた。
誰も「本当のこと」なんて、教えてくれないし、そんなもの、探したってどこにも見つかりやしない。
何よりも本当なのは既読の3文字だけで、私は、私の欲しい意味を勝手に探しているだけだ。

 

明日の朝も
とても早い (キラキラ)

 

大森さんが最後に歌った『キラキラ』に、私の見て来た風景と、私の明日を歌われて、私の肩から力が抜けて行く。

「嘘ばかりでしょう」、その一行があれば、私は、もう、ありもしない「本当」にすがるのをやめて、明日の朝を迎えられると思う。

そんなことを考えながら、ライブを見終えて、家に帰った。(おわり)