ニワノトリ

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Buono! “I NEED YOU”について(改)

Buono!の “I NEED YOU”は、Buono!の二枚目のアルバム “Buono!2”に収録された、岩里祐穂作詞、AKIRASTAR作曲の楽曲である!

 

 

Buono!2”には、Buono!のメンバー3名がそれぞれメインボーカルをとる曲が収録されていて、そのうち、ももちこと嗣永桃子がメインボーカルを担当しているのが“I NEED YOU”です。なお、ほかの二人のメンバーについては、夏焼雅が “消失点〜Vanishing Point〜”、鈴木愛理が “OVER THE RAINBOW”でそれぞれメインを担当しています。この三つは、それぞれのメンバーの声をほかの二名のサポートが生かすような構成になっていて、Buono!のラストライブでは、ハロプロ屈指の歌唱力を誇るBuono!の歌声を活かすべく、アコースティックバージョンで演奏されました。

 

メインボーカル曲なだけあって、ももちは何度か "I NEED YOU"をソロで歌ってきています。例えば2012年のBuono!の冬のライブ “R・E・A・L”。ももちはソロ曲として、 “I NEED YOU”をギターのソロ演奏と共に歌っていました。卒業が決まってからも、ディナーショー “HAPPY DINNER TIME ~ももにさちあれ!~”のセットリストに組み込まれました。ももちのラストアルバム “嗣永桃子 アイドル15周年記念アルバム ♡ありがとう おとももち♡”収録曲を選ぶファン投票では4位に選ばれ、 “I NEED YOU”は、ももちの代表曲の一つとして定着しつつあります。 

 

 

ディナーショーでこの曲を選んだ理由について、ももちはブログにこのように書いていました。

 

卒業発表をした今、わたしとファンのみなさんを歌った曲に感じるなぁと思い絶対に歌おうと思っていました。

https://ameblo.jp/countrygirls/entry-12265427682.html

 

卒業発表を経て、卒業の日、6月30日(金)。

青海特設会場で行われた、ももちのラストライブ “嗣永桃子ラストライブ♥ありがとう おとももち♥”でも “I NEED YOU”はピアノの伴奏とともに歌唱されました。

ディナーショーでもそうであったように、卒業ライブというこの大切な日にも、この “I NEED YOU”という一曲は、「ももちとファン」を歌いあげてくれたのである!

 

ということで、前置きが長くなりましたが、このブログ記事では、私の大好きなこの “I NEED YOU”という曲について、書いてみたいと思います。

 

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ももちのラストライブに、Dolce(Buono!のバックバンド)からお花が来てた!

 

 

ももちがラストライブでこの曲を歌っていた時の風景をよく覚えています。梅雨の野外ライブ、朝から小雨がぱらつき、天気が心配された中、ライブが開演する頃には雨はすっかり上がっていました。 “I NEED YOU”を歌うとき、雨上がりの空はちょうど、夕焼けを迎えようとしていました。

 

夕陽がやけにまぶしかった
泣きたい気持ちこらえてた
君のいない世界は ねえ どんな世界

 

 

ももちが “I NEED YOU”を歌いだすとき、青空に浮かんだ雲は、オレンジ色の太陽に照らされて、筆で描き込んだような深い陰影を描いていました。その下に設置されたアーチ形のセット、その後ろをゆりかもめが走って行く。
周囲では鼻をすする音、喉にひっかかったような嗚咽の音がひっきりなしに聞こえていて、ピンク色のTシャツを着たヲタたちは、泣きたい気持ちを全然こらえられていませんでした。

 

昼と夜の境目、駅と駅の間をつなぐゆりかもめ

「I NEED YOU」はそうした、時の狭間、空間の狭間、で歌われるのに相応しい曲であったと思います。

 

泣きたい気持ちこらえてた
君のいない世界は ねえ どんな世界

 

“I NEED YOU”は、「君」との別れの曲ですが、それ以上に、別れの「手前」に立った曲です。
この曲はまだ、「君と一緒にいる世界」にいて、「君がいない世界」の入り口の前に立っている。そこで、「君のいない世界はどんな世界なんだろう」と、もうすぐ訪れる「君がいない世界」を予感し、震えている。
そんな曲だと思います。

 

あの日…
突然、好きになった
だけど突然、嫌いになんてなれない

 

「君がいる世界」は突然訪れ、「君がいない世界」は徐々に訪れる。
突然訪れる「別れ」もありますが、時に、「別れ」は瞬間のものではありません。「別れ」が決まってから、「別れ」が訪れるまでのあいだにタイムラグが発生することがあります。
例えば、心が「別れ」を受け入れるまでの時間。君に借りていた漫画を返すまでの時間。君の部屋に置きっぱなしにしていたあれこれを引き取るまでの時間。

 

「別れる前/別れた後」。この二つの間にひかれた「/」は時に分厚くて、この/は、「別れる前」から「別れた後」へとグラデーションになっています。
“I NEED YOU”とは、そうした「/」を歌った曲ではないでしょうか。
だからこそ、「夕陽」という、時と時の狭間がとても似合うのだと思います。

 

忘れるなんてムリだけど 思い出にもしたくないんだ

 

「思い出」になるとは、「君と一緒にいる世界」が過去になるということ。
「君と一緒にいる世界」が「私の世界」から切り離され、「君と一緒にいた世界」になってしまう。
「いる」から「いた」へ。
時制の変化の狭間にある “I NEED YOU”は、アイドルが卒業を発表してから、卒業するまでの時間を、そして、「ラストライブ」という別れそのものであり、かつ、別れの直前でもある祝祭空間を、最も映し出した曲の一つでした。

 

f:id:n1wator1:20170702031210j:plainライブが始まる前はこんなに曇っていた……

 

私はこの曲がとても好きで、というのも、私はこの曲でももちのことを「突然、好きになった」からなのですが、しかし、一点、この曲でずっと引っかかっていた箇所がありました。

それは、この曲の終わりに歌われるこの部分です。

 

I NEED YOU
いつまでも大好き
君がいても 君がいなくても 想ってる

 

「君がいても 君がいなくても 想ってる」……
「君がいても 君がいなくても」のところで、「私」が「君がいない世界」を受け入れたように見えて、「想ってる」のところで、あれ、そうじゃないのかな?となる。ずっと、「ん?」という違和感がありました。

 

けれど、ラストライブで、夜を迎えようと、沈む太陽を背景に歌われた、その歌詞を聞いたときに気が付きました。

 

“I NEED YOU”とは、「君のいる世界」を「君のいない世界」へ接続するための歌なのではないか。

今日が終わって、明日が来ても。その朝に君がいなくても。君がいる、いないに関係なく、今、ここに君への想いがあるからこそ、明日が訪れる。

そうした想いへの確信こそが、「私」の背中を「君のいる世界」から「君のいない世界」へと押し出すのではないか。

この曲にあるのは、「/」ではなくて、「私」が次へ踏み出すための「→」なんだということ。ももちを好きになってからずっと聞いてきた曲で、特に、卒業が発表されてからは、CDでもライブでも何度も聞いてきた曲でしたが、ラストライブでこの曲を聞いて、私は初めてこのことに気が付きました。

 

それはきっと、ももちが、野外というシチュエーションで、夕陽とゆりかもめを背負って、「今」と「これから」を接続するように、 “I NEED YOU”をとても丁寧に歌い上げてくれたからだったと思います。

 

I NEED YOU
どれだけの涙を流したなら 幸せになれるの
I NEED YOU
いつまでも大好き
君がいても 君がいなくても 想ってる

 

“I NEED YOU”は、「君のいない世界」を想って涙を流しながら、その不安に震えています。しかし、この曲は、「幸せになれるの?」と不安におびえ、「君のいない世界」の入り口の手前で立ちすくみ続けることではなく、「君がいた世界」で得た想いを背負ったまま、「君がいない世界」へ踏み出そうとして終わるのです。

(ももちが、「私はビジュアルもいいし、愛嬌もあるし、運もあるから大丈夫」「だから幸せになってください」とファンの背中を叩いてステージを去っていったように)。

 

 

私は、上記のBuono!の2012年冬のライブ "R・E・A・L"でこの曲を聞いて、ももちのことがとても好きになりました。ラストライブで、青海の空に響くももの歌声を聞いて「あ、そうか、この曲って、「君がいる世界」と「いない世界」を重ねる曲なんだ」と気付いたとき、"R・E・A・L"で聞いた時の記憶が、ラストライブで見るももにクロスオーバーして、あの時から今まで、私はずっとももちの歌声に支えられてきたなあ。ということを思い出しました。

 

ラストライブで、ももちと、"I NEED YOU"のことを好きにしてくれて、そして、その上で、その次の世界へと背中を押してくれて、ありがとうという気持ちでいっぱいです。

この曲も、どの曲も、どの展開も、ライブすべてが隙間なく素敵だったけど、やっぱり、"I NEED YOU"が私の一番の思い出の曲だから、この曲について書きました。

"R・E・A・L"で、ももちが「カモン!」と客席にマイクを向けたあの瞬間のことも、ももちが呼び込んだかのような、青海の綺麗な夕陽のことも忘れません。

15年間、本当にお疲れさまでした。 #ありがとうおとももち♡