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ニワノトリ

ハロプロ、大森靖子さん、宇多田ヒカルさん、amazarashiなどのJ-popの楽曲レビュー・考察、ライブレポなどを書いているブログです。カテゴリ「このブログについて」に記事のまとめと更新情報があります。ご連絡はTwitter:@ok_take5、メール:tori.niwa.noあっとgmail.comまで(http://n1watooor1.exblog.jp/は愚痴用になりました)。

「ググれカス」というエール/大森靖子『きゅるきゅる』(の煽り文句)についての雑感

大森靖子のメジャーデビューシングル、「きゅるきゅる」のMVがYouTubeにて公開されました。

『きゅるきゅる』の謳い文句は、サビの歌詞でもある「ググってでてくるとこなら どこへだって行けるよね」。
今回は、大森靖子が「ググってでてくるとこなら どこへだって行けるよね」と歌うことについての雑感を書いてみたいと思います。

 

 

■「あなたが・まだ知らない言葉で・ググらせてあげる」

 


大森靖子「きゅるきゅる」Music Clip [HD] - YouTube

 
上に貼ったのはもちろんYouTubeの動画だが、今のところ、YouTubeさんで「きゅるきゅる」と検索をかけると「キュルキュルではありませんか?」と検索ワードを正そうとしてくれる。
Google先生は何も聞いて来ない。Yahoo!先生も聞いて来ない。
彼らはすでに「きゅるきゅる」という言葉の存在を学習しているのだろう。
しかし、きっと、そのうち、YoutTubeさんも「キュルキュル」と検索をかけた誰かに「きゅるきゅるではありませんか?」と聞いてくれるようになるに違いない。

2014年8月、今まさに、大森靖子によって、「きゅるきゅる」という新しい検索ワードが生まれ、そして、定着しつつある。

これまで、大森靖子は新しい(そして、強烈な)言葉=検索ワードを生み出して来た。

  •  進化する豚 ("Over The Party")
  •  魔法が使えないなら死にたい("魔法が使えないなら")
  •  きらきらきらい("エンドレスダンス")

など。

大森靖子公式ページ大森靖子の言葉に溢れているように、大森靖子(陣営)は大森靖子の言葉に自信を持っている。
大森靖子の前で多くの人を立ち止まらせるために、彼女の言葉の鋭さや吸引力に賭けている。

大森靖子は夏フェスについて書いたブログの記事に、彼女自身の「言葉」について、このように書いていた。

 

「私は目に付く言葉を与える。みんなの語彙力のなさは優しさと正しさのせいだ、私にはそれが欠如している、だから言葉を持っている。」
あまい:大森靖子夏フェスの戦い方

 

大森靖子は「言葉を持っている」。何かが欠如した、だからこそ他の誰も持っていない言葉。人の目を一気に引き寄せる強烈な言葉。

   

ググってでてくるとこなら どこへだって行けるよね

 

この煽り文句(歌詞)は、そんな大森靖子の堂々たる宣言なのではないか。

「あなたに・あなたがまだ知らない言葉で・ググらせてあげる」
「あなたに・あなたがまだ知らない・検索ワードをあげる」

とでもいうような。

 

■はじめに、検索ワードありき……からの?

ここで、突然だが、この2014年7月に発売されたとある本を紹介したい。
東浩紀の『弱いつながり』(幻冬舎)である。
というのも、この本、謳い文句が「Googleが予測できない言葉を手に入れよ」で、『きゅるきゅる』と同じく「Googleで検索する」という行為がキャッチコピーになっているのだ。

  • 同じ2014年の夏に発売される本とCDが同じくGoogleという言葉を宣伝に用いていること。
  • その内容が「Googleが予測できない言葉を手に入れよ」と「ググってでてくるとこなら どこへでもいけるよね」と、(一見)真逆であること。

この偶然(必然?)の一致と対立は面白い。
他方は「今、あなたが行っているGoogle検索から離れることで人生を変えよう」と言ってるように見えるし、もう片方は、「Google検索の先に世界が広がるよ」と言っているように見える(額面通り捉えると)。

しかし、実際に『弱いつながり』を読んでみると、「Googleが予測できない言葉を手に入れよ」と大森靖子が言う「ググってでてくるとこなら どこへでもいけるよね」は近い関係にあるように思えて来る。

すなわち、大森靖子は「Googleが予測できない言葉」を生み出して来たのではなかったか。

長くなるが、少し、『弱いつながり』を引用してみよう(以下、全てkindle版より引用してます)。

 

 検索ワードは、連想から生じてきます。脳の回路は変わりません。けれどもインプットが変われば、同じ回路でもアウトプットが変わる。連想のネットワークを広げるには、いろいろ考えるより、連想が起こる環境そのものを変えてしまうほうが早い。同じ人間でも、別の場所でグーグルに向かえば、違う言葉で検索する。(「0.はじめに」より) 

 

グーグルが与えた検索ワードを意図的に裏切ること。
環境が求める自分のすがたに、定期的にノイズを忍び込ませること。(「0.はじめに」より)

 

『弱いつながり』が言っているのは、簡単に言えば

 

例えばYouTubeでずっと関連動画やおすすめ動画をめぐっていても、あなたが見たいと予測されるものしか上がって来ないから世界は変わらない。今まで見たことない動画(世界)に行くには「あ、そうそうこれ興味あったんだよねー!」とピンと来る「おすすめ商品」じゃなくて、「何これ、知らない」という「偶然」の出会い=「ノイズ」が必要。だから、とりあえず、今まで行ったことのないところへ旅行にでも行って、「新しい検索ワード」を手に入れて入力して、YouTubeとかGoogle先生の予測を混乱させてみよう。
(※引用ではなくて私の勝手なまとめです)

 

ということである。(実際は、色々な事例と共にもっと面白いことが書いてあるので、お時間あれば、読んでみてください。→ amazon弱いつながり』)

 
***

ここで思い出すのが、大森靖子が常々発言している、1987年生まれのコンプレックスだ。

「2013年3月に発売した「魔法が使えないなら死にたい」の制作意図は、私の世代の人間が持つ「全ての芸術に対するコンプレックスの浄化」を目標としたものでした。きゃりーぱみゅぱみゅの台頭により、「携帯デコ世代だし、選んで切って貼るしかできない」と卑屈になっていた創造力の無さとネタ切れ感を逆手にとった発想というか、やっとこういうことが認められる時代になったんだなーって思ったんです」
セカンドアルバム 絶対少女 | 大森靖子公式ページ

 

大森靖子の言葉は、その切り貼り力がすごい。2013年3月まで、どこのGoogleが、「魔法」→「使えない」→「死にたい」という言葉を予測できただろうか。
「魔法」というファンタジーと「死にたい」という「私の」絶望を臆面なく糊付けしてみせるこの堂々たる歌詞。
携帯デコ世代の感覚を武器に、彼女は言葉やジャンルの "あるべき姿"をふわりと横切り、裏切り、その表面を救い上げては世界を切って貼り着ける(観光客のように)
大森靖子の言葉は予測できない。彼女の言葉にはノイズが溢れている。

『きゅるきゅる』だってそうだ。一番は比較的すっきりかわいくまとまってるのに、二番で歌詞もMVも暴れ出す。ピンク色の部屋から飛び出し、トラックの上に乗り、ザーメンと言って、オナホールを舐める。彼女は実に分かりやすく、記号的にノイジーだ。
大森靖子の言葉は、「ノイズ」が起きるような形で言葉を作り上げる。最初のうちは大人しくサビの頭だけに収まっていた「きゅるきゅる」という言葉も、曲が進むごとにどんどん増殖し、他の言葉を侵食して行く。
彼女の音楽は、従来の「連想のネットワーク」から離れたところから言葉を持ってきてはネットワークを破壊し、貼り付ける。

だからこそ、人々は大森靖子の言葉を求める。
大森靖子のノイズは、聞く人を、今までの言葉ではたどり着けなかった場所へと導くからだ。そして、人々はそのたどり着いた先で、「これこそが、私の欲しかった検索ワードだ」と確信する。
大森靖子は、今までたどり着けなかった場所に行き着くための適切な検索ワードを教えてくれる。
ググるための言葉を与えてくれる。
今までたどり着けなかった場所へたどり着くための検索ワードを教えてくれる。

 

しかし。


「ググってでてくるとこ」に「いく」のは誰か? 
「ググってでてくるとこなら どこへだって行けるよね
そう言われてしまったからには、もう、でてきたところに行くしかないではないか。
大森靖子の曲を聞いたものは、一つの連想の囚われ、うずくまることを止めなければならない。
パソコンの前から立ち上がり、大森靖子が手動で開けたドアをくぐり、外へ出て行かなければならない。
その先で、自分自身の検索ワードを手に入れて戻って来て、またパソコンの前に座って、『きゅるきゅる』を再生して聞き終わったなら、きっとYouTubeさんは、今までとは違う動画もおすすめしてくれることだろう。

 

***

とりあえず、この記事を読んで下さったあなたは、9/18に『きゅるきゅる』を購入し、『きゅるきゅる』をめぐる様々な情報を手に入れるために、『きゅるきゅる』をググってみればよいと思います。

Amazon.co.jp: きゅるきゅる (CD+DVD) (初回定生産盤): 音楽

Amazon.co.jp: きゅるきゅる: 音楽

大森靖子公式サイト


***

 

以上、『きゅるきゅる』を聞いて、『弱いつながり』を読んで、思ったことでした。CDを手に入れたら、『きゅるきゅる』という曲自体の感想文も書きたいです。

 

 

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