ニワノトリ

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Berryz工房という愛の軍団! /Berryz工房『愛はいつも君の中に』の感想

http://www.alivem.net/berryz-kobo/1867/
「アライブモーニング」さんに、この記事をまとめたレビューを掲載していただきました。ありがとうございました

 


 

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Berryz工房の両A面シングルのもう一曲、『愛はいつも君の中に』のMVがYou Tubeで公開されました!






……好き! 


つんくさんが、今まで、色んな曲を作るなかで、聞き手に伝えたかったことやメッセージが、この一曲の中にうまく抽出されているような気がします。
少なくとも、私の中では、これまで、色んなハロ曲を聞きながら「つんくさんが言いたいことってこういうことなんじゃないかな」と漠然と考えていたことが、『愛はいつも君の中に』を聞くことで、すごくクリアになりました。



「普通、10年やってらんない」はずのアイドルを10年やってきたベリが歌いこなしてこそカッコよさが増す本曲。
この曲を聞いて、私が最初に連想したのは、モーニング娘。の『愛の軍団』です。

これは、Berryz版『愛の軍団』だ!

 と思いました。


「ほんと?ほんと?」という疑問の提示に始まる『愛の軍団』における「愛」がまだ成長の過程にあるとしたら、「愛は愛の上に愛を作ったりはしないさ」と言い切る本曲は、成長を経た後に生まれた「愛」への確信、一つの完成された愛の形を歌っているのだと思います。

なので、少し、『愛の軍団』と『愛はいつも君の中に』を聞き比べてみたい。


「自分を信じて行くしかない 愛の軍団」
『愛の軍団』は、「自分を信じていくしかないんだ」という「宣言」あるいは「決意」が歌われて終わる曲です。すなわち、「愛の軍団」の行進はこの曲の後に始まるのだと言える。
ゆえに、『愛の軍団』はその曲中では、常に、「揺れている」と思います。
例えば、一番のサビで歌われる「本当に誰かを守りたけりゃ 他人の目なんて気になんない」「常識感覚とはいうけど 主観によるだろう」という歌詞も、「他人の目」が気になる自分、主観によるとはいえ、「常識感覚」なるものに合わせようとしてしまう自分の裏返しです。

二 番の「近くにあるときゃ分からなくて 遠く離れたら気がつく」「無いものねだりが人間でも ありがたさを知れ」も同様で、『愛の軍団』は常に、「遠く離れ る」まで気付けない自分、「無いものねだりをしてしまう自分」を前提としていて、そんな自分を振り切るために「孤独と戦い」「大きな力に飲み込まれない」 と腹の底から絞り出す。
孤独と戦えず、大きな力に飲み込まれそうだからこそ、「孤独と戦い」「大きな力に飲み込まれない」と宣言/決意することが必要なのです。
『愛の軍団』は「目的を知ら」ずに始まってしまった人生において、「大きな力」に飲みこまれて自分を見失いそうになりながらも、「ふるさとのような温もり」を足掛かりに、「使命感的な何か」を掴みとろうとしている。
『愛の軍団』は、悩み、苦しみを抱えながらも、何とか、前を向こうとする、そんな「愛」の始まりを歌った曲だと思います。

で、いうなれば、『愛はいつも君の中に』は、『愛の軍団』をもっと外側から、あるいは、『愛の軍団』の進んだ先から、『愛の軍団』について歌った曲なんじゃないかと思います。

例えば、『愛の軍団』では、「他人の目」や「常識感覚」を気にする「自分」を叱咤する様が歌われていましたが、『愛はいつも君の中に』では、「どんなに良いように見られたくても ねえ君は君以上でも以下でもない」とスパッと言い切られている。

『愛 の軍団』は「成功したら幸せだとか ほんと?ほんと?」「苦労買ってでもした方がいいって ほんと?ほんと?」と、[成功」という結果には本当に意味があ るのか、その過程の「苦労」には意味があるのか、疑問を投げかけていましたが、『愛はいつも君の中に』は、「そう どんな結果であれそれがが全てさ ねえ  もしも しかし まさか たらもればもない」と、世の中はその過程がどうであれ、「結果」でできているのだと言い切る。


さらに、「美人よりモテる人がいるのも事実」「姉妹でも得意分野違うのも事実」「学歴より稼ぐやつがいるのも事実」「由緒ある家系の奴がいるのも事実」と、どんなに苦労をしようと、しまいと、世の中は不公平で、理不尽にできているのだと畳みかける。

『愛の軍団』は、「自分を信じて行くしかない」と、行進を始めようとしているけれど、『愛はいつも君の中に』はすでにその先にいて、

 どんな時も正義が勝つ そんな世であれと願おう 


と 歌います。『愛はいつも君の中に』は(自分の)正義を信じて進んでも、それが報われるとは限らないということを知っていて、どんなに信じて天命を尽くして も、最終的には「願う」ことしかできなのだと悟っているのと同時に、それでも.だからこそ、「願う」ことの尊さを知っているのだと思います。

この曲は、『愛の軍団』が「愛」の名の下に行進を始めようとしているのに比べれば、どちらかと言えば、「愛」というものを客観的に眺め、「愛」とはこういうものだと定義し、「君」が「愛」とどう付き合うべきかを歌っているような気がします。

幾 度と繰り返される「愛は愛の上に愛を作ったりはしないさ」というサビの歌詞は「天は人の上に人を作らず……」を文字って書かれた歌詞だと思いますが、人の 場合、「人は人の上に人を作らず」というわけにはいかなくて、最終的には、「(天が)人の上に人を作っていませんように」「正義を勝たせてくれますよう に」と、運を天に任せ、天に祈るしかない、そんな部分がある。
一方の愛は「愛を作る」ことができる。「寂しがりや」で「時に気まぐれ」で、隣にい る悪魔が囁くのを止めてくれなかったりもするけれど、愛はいつも「上に愛を作らず」「下に愛を作」ったりもしない。健やかなる時も病める時も、愛は、上や 下にぶれることもなく、「愛」という存在を貫き、自分は不変であるという顔をして存在している。
そして、人間はそんな「愛」の前で、人間は誘惑や臆病にささやかれてぐらついては、自分の弱さを思い知らされる。


愛はいつも君の中に』で秀逸だなあ、と思うのが、「上に」「下に」「中に」という歌詞で、この曲は冒頭と最後で「愛はいつも君の中で光る」と歌い、その間で、何度も「愛は愛の上に愛を作ったりはしない」「愛は愛の下に愛を作ったりはしない」と繰り返している。
すなわち、この曲は曲中では愛の何たるかを歌っているけれど、最終的にこの曲が「君」に伝えようとしているのは、その愛が光る場所は「君の中」なのである、ということで、「愛」は自分で自分を作ることはできても、「君の中」にいることができなければ、光ることができない。
この曲が言いたいのは恐らく、「愛は君次第」なのだということで、この曲は「愛を光らせることを忘れるな」と囁いている。


「愛」はそのままで輝くわけではなくて、その愛を輝かせるためには、「愛」を自分の中に留める努力を怠ってはならない。

『愛の軍団』は、「愛(の軍団)」の幕開けを歌った曲でしたが、『愛はいつも君の中に』は、「愛」が一筋縄ではいかないこと、だからこそ、「君の中」でしか輝かないのだということをすでに知っていて、『愛の軍団』よりもっと先に歩みを進めている。
『愛 の軍団』は、これから「モーニング娘。」を作り上げて行く若いメンバーが多い娘。が歌うからこそ、歌詞の中に描かれた青い苦しみとか、そこから生まれる 「愛の軍団」という存在の始まりが、説得力を持っていましたが、『愛はいつも君の中に』は「普通、10年やってらんない」アイドルを10年やっちまったベ リが歌うからこそ、世界観が完成するのだと思います。

ベリは、「10年」やってくる中で、「猫だって杓子だって 名刺を作れば即アイド ル」と、アイドルが単なる夢の世界ではないこと、「誘惑だって半端ない」「雑念は禁物」で勘違いしたらそこまで」で、「友達」がママになっても、自分は 「ママからのダメ出し」の世界の中にあるという、アイドルという存在の現実や厳しさを身をもって体験してきている。そして、その上でなお「それでもアイド ル I love it」と歌うことができる。時には正義が敗けてしまうような現実の中で、Berryz工房というアイドルグループを貫き、作り上げて来たベリだから、「ど んなに良いように見られたくても 君は君以上でも以下でもない」「もしも しかし まさか たらもればもない」(けれど/だから)「どんな時も正義が勝つ そんな世であれと願おう」「愛はいつも君の中で輝く」と語り掛けることにはすごく説得力がある。
こういう、「君は君以上でも以下でもない」という 現実と、それでも/だからこそ、「愛」や「夢」のようなものを願うことは尊いのだというのは、おそらく、つんくさんが昔から歌にしてきたテーマで、ベリは 10年選手だからこそ、そういうテーマを、こうして少し俯瞰的に歌うことができるのだと思います。

普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?』が、10年やって来たベリの歴史とその先に始まるベリの新しい物語の幕開けを歌っているとしたら、『愛はいつも君の中に』はベリが築き上げてきた美学を歌ったものかなあという気がします。
今回の両A面シングル、どちらもベリにしか歌えないものが詰まっていて、私、すごく好きです。
マイレージは「良い奴/ええか!?」でブレイクスルーを果たしたというイメージがあるんですが、ベリにとっても今回の両A面シングルはベリの集大成である とともに、新しいベリの魅せ方、今のベリにしか見せられないものを掴み取ろうとしている、そんな重要なシングルになるのではないでしょうか。


※この記事は、http://n1watooor1.exblog.jp/ にて、2014/5/24に公開したものです。

 

 

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